超高齢化社会を迎え、自分の人生をどのように締めくくるかを考える“終活”が盛んになっている。そんななか、密かに人気となっているのが「入棺体験」だ。

 文字通り棺の中に入る体験イベントで、シニアライフコンサルタントで終活カウンセラーの坂部篤志氏とウィルライフ(東京都港区)が2013年3月から共同で開催。インターネットで告知した瞬間に定員が埋まるほど盛況だという。

 以前から「生前に棺桶に入ると長生きできる」といわれ、入棺体験は葬儀社のイベントなどでよく行われていた。しかし最近のそれは少し様相が違うようだ。現在、発行部数51万部を超えてベストセラー本「大往生したけりゃ医療とかかわるな~自然死のすすめ~」の著者で医師の中村仁一氏は、同書の中で自らの入棺写真を掲載し、こう述べている。

 「自分の死を考える」ための具体的な行動の中で、一番のお勧めが、この「棺桶に入ってみる」ですね。(中略)人生観に変化が出ますし、物の整理が進みます。

(「大往生したけりゃ医療とかかわるな~自然死のすすめ~」 第四章「自分の死について考えると生き方が変わる」より抜粋)

 なぜ入棺体験で人生観が変わり、物の整理が進むのか。いったいどんな人々が参加しているのか。実際に入棺体験イベントに参加し、その謎を探った。

「自分の死に時を自分で決める」という画期的な提案で、2012年1月の発売から51万部を突破したベストセラー「大往生したけりゃ医療とかかわるな~自然死のすすめ~」(中村仁一著、幻冬舎刊、760円)
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2009年、古稀の記念として自ら手に入れた棺に入る著者
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入棺体験希望者ってどんな人?

 入棺体験の会場は、西麻布にあるウィルライフ社が入居するビルの1階「エコフィンラボ」。使われている椅子やテーブル、本棚は全て強化段ボール製だが、これはウィルライフが米国の物流梱包材(いわゆる段ボール)会社「トライウォール」のグループ会社だから。イベントで使用される棺は軽くて強靭な特殊強化ダンボール「トライウォール」の特性を活用している環境にやさしいもの。つまり、このイベントは同社の棺のPRも兼ねているのだ。

 入棺体験イベントは2013年3月から月1回のペースで開催し、今回で4回目。会社帰りに立ち寄れる19時からスタートし、時間は1時間~1時間半程度。缶ビールなどのドリンクとスナック付きで、会費は1人1000円となっている。体験前後の気持ちの変化や感想を話し合う時間を大切にしているので、参加人数は6人程度に限定しているという。開催告知はウィルライフと坂部氏、両者のFacebookで行うが、毎回告知と同時に参加人数に達するほどの人気だそうだ。

 いったいどんな人たちがイベントに参加しているのか。同社の増田進弘社長によると、参加者の属性はさまざまだが、共通しているのは“まじめな気持ちで参加している”こと。興味本位や冷やかしで参加した人は今まで1人もいなかったそうだ。過去4回の参加者で多かったのは、新しいものを体験して広めたいという気持ちが強い人。また環境や教育に興味を持つ人の参加も多いという。生死の問題はそれらの問題と深く関わっているからだろう。さらに家族や親族の葬儀を通して現代の葬儀のありかたに疑問を抱いている人も多いとのこと。なかには自分の気に入った写真で遺影を作って持参する人や、「愛用しているジャンパーを棺にかけてほしい」と希望する人など、個性豊かな人が多いそうだ。

環境にやさしい強化ダンボールを使った棺「エコフィン」を企画・開発するウィルライフの増田進弘社長。エコフィンを通して新しいスタイルの葬式を提案し、NPO手元供養協会副会長の顔も持つ。「入棺体験が死を意識する年齢に達した人の通過儀礼のようになったらいい。『お前、まだ入ってないの?』というように。そうすればいろいろな迷いが消えて、いい老後を送れるのでは」
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