商品開発や販売の新たな手法として注目されているのが、人の視線を解析するアイトラッキング技術だ。

 アイトラッキングとは文字通り、人がどこをどのように見ているか、眼球の動きを追跡して測定・解析すること。これまでは主に、心理学や医学、工学といった学術研究分野で活用されてきた技術だが、ここ数年、マーケティング分野にも浸透しつつあるのだ。

 はたして、どのような技術で、どのように活用されているのか。アイトラッキング調査を商品リニューアル時に導入し、従来の常識が覆る結果を目の当たりにしたというダイドードリンコを取材した。

アイトラッキング調査でわかった結果を反映した同社の自動販売機(左)と従来型の自動販売機(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 ダイドードリンコが主力商品である「ブレンドシリーズ」を大リニューアルしたのは、2012年秋のこと。コーヒーの「本物の美味しさ」を追求し、最適にブレンドされた複雑で奥深い味わいのコーヒーの実現に自信がある一方で「それをどうしたら消費者に伝えられるか、という課題がありました」(ダイドードリンコ マーケティング部の細井裕美氏)という。

 なにしろ同社は、自動販売機での売り上げ比率が高い飲料メーカー。もともと、配置薬を扱う薬品メーカーが設立母体で、置いて販売する形態から自販機での販売に注力。自分たちがオススメする製品をセットして販売できる場として、自販機をひとつの店舗と捉えてきた。ルーレットをつけて当たりをだす自販機や、黙って缶コーヒーを売るだけだった自販機におしゃべり機能をもたせるといった斬新な展開は、そうしたこだわりから生まれてきたものだ。しかし、自販機には店頭販売と異なる難しさもある。

 「自動販売機での購入は、飲みたいと思ったときに自販機を見つけていただかなければ、成り立ちません。また、スーパーなどの販売と比較すると、より短時間で、直感的に買われる傾向があります。無意識に近い、数秒の判断で勝負が決まってしまうのです」(細井氏)

 そこで同社はリニューアルにあわせ、人がどのように自販機をみつけて、並んでいる商品の中から飲みたい1本を選ぶか、無意識に近い行動を解明しようと考えた。

 インタビュー、試飲調査、会場調査などの従来のマーケティング手法にプラスして、新しく導入したのがアイトラッキング調査だ。アイトラッキング技術で大手のトビー・テクノロジーが開発した動きながら視線を測定できるメガネ型「Tobiiグラス アイトラッカー」を採用し、2012年1月から調査を開始した。

2013年春のブレンドブラックシリーズ
[画像のクリックで拡大表示]