酒を飲まなくても食生活で肝臓は悪くなる

 血液中にγ(ガンマ)-GTPが流れ出たからといって、コレステロールとは違い、人体に悪影響を及ぼすことはない。だが、血中のγ-GTPが高いことで、肝臓の状態が悪いことが推理できる。一般に、γ-GTPは酒と関係が深いと考えがちだが、必ずしもそうではないという。「酒をやめても高いまま下がらない人もいる。そういう人は、内科で肝臓のエコー検査をして胆石や胆道の炎症などがないかをチェックしてみるといい」と肝臓に詳しい中田内科クリニック院長の中田哲也さんは語る。

脂肪肝は糖尿病の予備軍

 肝臓が持つさまざまな働きの一つに、食事によって小腸から吸収したブドウ糖を一時蓄えておく機能がある。そして、少しずつ放出する。食べて得たブドウ糖すべてを、そのまま血中に出すと、血糖値が高くなりすぎてしまうからだ。

 だが、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝や肝臓の病気などで肝臓がへたっていると、そうした調節機能が利かなくなってしまう。すると、小腸で吸収された栄養がストレートに出て、食後はかなりの高血糖となり、睡眠時は逆に低血糖状態となる。これが続くと、徐々に膵臓が疲弊してインスリンの分泌が悪くなっていく。「結果的に、脂肪肝のある人は、糖尿病の予備軍と考えたほうがいい」と中田院長。さらに、「γ-GTPの値も重要だが、長い目で見ると、ウイルス性肝炎の可能性を示すGOT、GPTの変化にも注意してほしい」という。ウイルス性肝炎が慢性化して、肝硬変、肝臓がんに移行する恐れがあるからだ。

酒は飲まないからオレ、肝臓だけは心配ないよ
なんていってるアナタ。酒を飲まないからと安心してはいられない。飲まない人の脂肪肝が増えている。肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれるように、アルコール、暴飲暴食やストレスにもじっと耐え、代謝や解毒といった体に欠かせない働きをしてくれる頼りがいのある臓器だ。だが、自覚症状が出ないからといって安心してはいけない。逆に、自覚症状が出てきたときはかなり病気が進行していると考えた方がいい。
肝臓ほど大変な仕事を黙々とこなしてくれる臓器はない。とはいっても無理が続けばいつかはダウンする。そうなると、体の材料となる糖や脂肪がつくれなくなってしまうから一大事だ
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シグナルcheck!
γ-GTP
NEW ここもcheck!
GOT、GPT
肝臓の細胞内にある酵素で、胆汁を作るなどの働きがある。アルコールのとりすぎや胆道の炎症、胆石によって細胞が壊されると血中に出てくる。男は10~50IU/Lが正常値とされる。 GOT、GPTもまた、普段は肝臓内にある酵素だ。主に肝炎によって肝臓の細胞が壊れると血中に出てくる。正常値は40IU/L以下。100IU/L以上になると、肝炎、肝硬変、脂肪肝などが疑われる。

“負”のサイクルに陥らないためのコレだけ習慣

 今回紹介した四つの危険シグナルは、お互いに深く関係して悪循環に陥っていく。だが、逆に一つを改善することで、ほかのシグナルも改善するという好循環も期待できる。

 四つの危険シグナルは、生活習慣次第で、正常値に収めることができる。なかでも重要なのは、エネルギーの出入りのバランスを考えること。つまり、引き算の考え方だ。

 「食べてとるカロリーが、消費するカロリーよりも多い状態が続くと、危険シグナルは異常へと近づいていく」と中田さん。

 そのために、適度な運動が欠かせない。だが、仕事で忙しくて運動などする暇がないという人もいるだろう。そんな人は、仕事の中で体を動かすことを考えよう。

 「例えば『立ったまま会議』がいい。若い人は座らせておき、会議の進行役であるあなたは立ったまま。ときには若い者の間を歩いてにらみを利かせれば一石二鳥」と河盛特任教授は提案する。

 方法はいくらでもある。休憩時間に会社の内外をぶらぶら歩いたり、帰りの電車で1駅手前で降りて歩いたりするのでもいい。無理のない範囲で、自分で工夫してみよう。

健診はこまめに治療は早めに!
健診の再検査どころか、要治療と診断されても治療を受けない人が多い。取り返しのつかないことになる前に治療は早めに!
若いころとは違う今こそ食事を見直せ
40代になったらカロリーのとりすぎに注意。代謝機能が衰えてくるので、若いときと同じ量を食べていてはシグナルは悪化する一方。特に、ラーメン、揚げ物は控えめに
ストレス発散を心がけ信頼できるかかりつけ医を
強いストレスを連続して受けると高血圧の元。きちんと睡眠をとり、趣味や入浴でストレス発散を。自宅の近くに信頼できるホームドクターを見つけておくことも重要
激しい運動ではなく歩くこと から始める
激しい運動をするよりも、しっかりと呼吸しながら歩くのがいい。その場合も、いきなり1万歩を目指すのではなく、自分にあったペースから始めるように

(取材・文/二村高史、イラスト/前田はんきち、構成/なかよくオフィス)