※この記事は日経ヘルス for MEN「筋トレで腹を凹ます」をもとに再構成しました。

 会社の健診で下された「要治療」の診断。でも、「自覚症状がないから大丈夫」「忙しいからそのうちに」と、放ったらかしにしていないだろうか。そんな人にぜひ知ってもらいたい診断データのちょっとコワい真実がある。なかでも働き盛りの男性にとって気になるのは、今回紹介する、血糖値、コレステロール、血圧、肝機能の四つの危険シグナルだ。

悪循環に陥ると30代後半でも発症

 30代以上の男性にとって、特に重要な危険シグナルは、血糖値、コレステロール、血圧、肝機能の四つ。しかも、この四つが深く関係しているというから面倒だ。一つが悪くなると悪循環を繰り返して、老化や生活習慣病の「諸悪の根源」である動脈硬化に結びついていくのである。動脈硬化とは、文字通り、血管が硬くなること。

 「古くなったホースを想像するといい。動脈硬化が起きた血管は、弾力性がなくなって傷つきやすくなる。するとその部分の血管の内側に脂肪分を中心とする残骸が粥(かゆ)状にこびりついて、血液が流れにくくなる」と三番町ごきげんクリニック院長の澤登雅一さんは説明する。

 動脈硬化は、実は10代から始まり、徐々に血管の内壁に脂肪の沈着が進む。40代半ばをすぎて発症するケースが多く、食事や生活習慣次第では30代後半で発症することも。決して人ごとではない。こうした状態を放置すると、さらに危険シグナルが悪化し、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)を進行させ、やがては、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中といった重篤な症状を引き起こす。

 だが厄介なのは、こうしたシグナルが危険な兆候を示していても、自覚症状に乏しいことだ。だから、「要治療の診察結果が出ても、症状がないのをいいことに、治療を受けずにいる人が多い」と澤登院長は嘆く。

命に関わるのに治療を受けない

 わが国の糖尿病研究の権威である順天堂大学大学院特任教授の河盛隆造さんも、「命に関わる重大なリスクを抱えているのに、面倒くさがって治療を受けないのは重大な問題だ」として、「糖尿病にしても、不治の病と思われがちだが、早く医者にかかれば早く確実に元の状態に戻れるということを知ってほしい」と強調する。すなわち、早く対策を打てば、時間もかからず、医療費も安く済むのだ。

 河盛さんが残念がるのは、「サプリメントは好んで服用するのに、安易に自己診断をして、医師に処方された薬をやめる人もいる」ということ。そして、「最近は効果が高く、副作用の少ない薬や注射も数多く登場している。自分の体質をよく理解してくれる『かかりつけ医』をつくり、納得しながら治療を続けていただきたい」と語る。

 この特集で四つの危険シグナルの真実を知ってほしい。

教えてくれたのは…
順天堂大学大学院 河盛隆造 特任教授
糖尿病の権威。糖尿病を広く啓蒙し、予防や早期治療を指導。

三番町ごきげんクリニック 澤登雅一 院長
血液のがんが専門。アンチエイジング 医療とがん治療に力を注ぐ。

中田内科クリニック 中田哲也 院長
肝臓の専門医として、内科勤務や講師を経て、03年から現職。

血糖値を左右するインスリンの働き

 食べ物をとると、消化器で栄養分がブドウ糖に分解されて小腸から吸収される。このブドウ糖が血液中に入ると、血糖値が上がるという仕組みだ。そのままの状態が続くと危険なため、健康な人の場合、直後に膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンが分泌され、すぐさま血糖値は正常値まで下がる。

 だが、インスリンの分泌量が少なかったり、働きが悪くなっていると慢性的に血糖値が高いままになり、尿にもブドウ糖が出てくる。これが糖尿病だ。

早期発見に食後の血糖値測定を

 過食、運動不足、肥満などで内臓脂肪がたまると、インスリンの働きが悪くなることが知られている。これが日本人に多い2型の糖尿病だ。糖尿病が進むと細胞の破壊が進み、失明、足の壊死(えし)、腎不全など全身に深刻な合併症が起きる。早期発見・治療が重要な理由だ。

 「早期発見には、食事後の血糖値を測ることが重要」と河盛特任教授。通常の健診では行われないが、疑いのある人や家族に糖尿病のある人は、ぜひ医師に相談して受けてみてほしいという。

 最近では、健診でも血中のヘモグロビンの血糖による変化がわかる、HbA1cの測定が行われるようになった。これにより、空腹時か食事後かに左右されず、血糖状態がわかるという。

 糖尿病の疑いがあるとされたら、必ず医療機関を受診する。「インスリンの分泌が減ってしまったら、運動や食事療法だけでは良くならない。医師とよく話し合い、症状や体質に合った薬や注射によって治療を続けてほしい」と河盛特任教授は強調する。

うちは糖尿病の家系じゃないから…
なんていってるアナタ。安心している場合ではない。遺伝だけでなく肥満や生活習慣による糖尿病が増えている。日本人の40代男性の5人に1人が糖尿病であるといわれ、加齢とともにその比率は高まる。予備軍を含めると2000万人以上に達するという。遺伝以外にも生活習慣が重要なポイントだ。厄介なのは、初期段階では自覚症状がないこと。「健診を受けないと糖尿病は発見できない」と河盛教授は注意を促す。
インスリンは血液中のブドウ糖の濃度が高くなりすぎないように、脂肪細胞や筋肉細胞へと運び、休まずコントロールしてくれる働き者。でも、働かせすぎると、やがて疲れて仕事をしなくなってしまう
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シグナルcheck!
血糖値
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食後血糖値
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のこと。一般に、空腹時の正常値は99mg/dl以下。200mg/dl以上の状態が続くと糖尿病が疑われ、ブドウ糖負荷試験などの結果によって診断される。 確実な診断には食事後の血糖値の変化を測定するのがベスト。食後になかなか血糖値が下がらなければ、インスリンの働きが鈍くなっていることがわかる。