女性を惑わす地下迷宮

 東急東横線・地下渋谷駅の迷宮を「探検」してきた。私は自他ともに認める「方向音痴」である。そのレベルは180度タイプ。私が、初めて行った場所で、「建物Aは前方にあるに違いない」と推測すると、実際には真後ろにあるケースが多い。前方にあれば0度タイプ、斜め前方にあると45度タイプ。そして、真横にあると90度タイプ、真後ろなら180度タイプ。平面で行動する場合には、180度以上のレベルはあり得ない。

 地下渋谷駅のホームは地下5階にある。これまでの経験則によると、地下空間では方向音痴のレベルは一気に強まる。そして、問題を抱えているのは、私だけではない。一般的に、女性は地下で迷いやすい、とされている。

 増井幸恵氏の論文「方向音痴意識の構造」(東海女子大学紀要)は、若い女性381 人を対象にした調査を分析。方向感覚は、次のような順番で、狂いやすいとした。

 (1) 地下街から外に出たとき
 (2) 地下街にいるとき
 (3) 繁華街にいるとき
 (4) 建物や地下街に入って、再び外に出るとき
 (5) はじめて行った場所

 上位5項目のうち、実に3項目が地下がらみである。

 また、竹内謙彰氏の論文「“方向感覚質問紙”作成の試み」(愛知教育大学研究報告)によると、「女性は、男性に比べて、自分を方向音痴と見なしやすい傾向にある」。

 つまり、地下5階にある地下・渋谷駅は、方向音痴の筆者だけではなく、女性をも惑わす空間なのである。

 渋谷の街では、建物がスクラップ・アンド・ビルドされるスピードが速い。その点、忠犬ハチ公の銅像は息が長い。1934年(昭和9年)に銅像が設置されたものの、第2次世界大戦の「金属類回収令」により、溶かされてしまった。しかし、終戦後の1948年(昭和23年)に再建され、すでに「築65年」。今や、ハチ公像は「変わらない渋谷」の中心地である。

 よって、「探検」の目的は、東横線・地下渋谷駅から、ハチ公像へたどり着くルートの点検とする。地下の迷宮へ、いざ──。

地図を入手して、周到に事前調査

 私には「わが身を守る5原則」がある。

 (1) 事前に、地図を周到に調べる。また、必ず地図を持参する
 (2) 目印になるもの(建物、山、銅像など)を覚えて行動する
 (3) 交通サイン(標識)を丁寧に確認しながら歩く
 (4) 道が分からないときには、分かっていそうな人に教えてもらう
 (5) 完全に迷ったら、タクシーに乗る

 この原則にしたがって、事前に、東急電鉄のホームページから「東横線渋谷駅」の構内図を入手した。

東急のウェブサイト「渋谷駅の構内」より
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 構内図には、大きく「立体図、平面図、出口案内」という3種類の情報がある。しかし、複雑で何が何だかよく分からない。しばらくボーッとした後、気を取り直して、再びジーッと眺める。すると、改札が6個所にあることが分かってきた。

 渋谷ヒカリエ1改札
 渋谷ヒカリエ2改札
 宮益坂東改札
 宮益坂中央改札
 ハチ公改札
 道玄坂改札