お腹の調子が多少悪くても「たかが便秘 or 下痢」と思っていたら、大間違いだ。最近の研究では、腸内細菌が免疫機能をはじめとする身体の調節機能に大きく関わることがわかっている。お腹の調子は、健康にとって大問題。腸を上手にコントロールして、すっきり健康になるには、どうすればいいのか。腸の専門家と免疫の専門家に、最新の情報を聞いてみた。

肉の食べ過ぎやダイエットが、大腸がんのもと

 「人間は独りで生きているわけではありません。腸内細菌と一緒に生きているんです」と言うのは、新宿大腸クリニック院長の後藤利夫医師だ。

 後藤氏によれば、腸の中には大量の腸内細菌が生きているという。腸内細菌は小腸にもいるが、大半は大腸にいる。そして私たちが食べたものの残りカスをエサにして、さまざまな物質を出している。その活動が人間にとって都合がいいものを一般に善玉菌、悪いものを悪玉菌という。

 私たちが食べた物の多くは酵素で分解され、小腸で栄養として吸収される。どろどろしたスープ状の残りカスは、大腸で水分を吸収されて、便として排出される。

 いろいろなものを食べ過ぎると、小腸で吸収しきれずに栄養の一部が大腸に行く。

 炭水化物は大腸まで行っても、善玉菌のエサになりやすい。炭水化物を完全に燃やすと水と二酸化炭素になるので、無害で臭いもない。しかも、善玉菌は肌の修復に役立つビタミンB2や、疲労回復効果があるビタミンB6を作ってくれる。善玉菌は、ゴミをきれいに処理してくれるゴミ処理場であり、役立つものに再生するリサイクル工場でもある。

後藤利夫医師 新宿大腸クリニック院長。大腸内視鏡検査の達人として知る人ぞ知る存在。『-ヨーグルトで健康革命- あなたの知らない乳酸菌力』(小学館)など、腸の健康に関する著作も多数。

 ところがたんぱく質が大腸まで行くと、悪玉菌が増える。たんぱく質には窒素や硫黄が含まれているから、悪玉菌は窒素酸化物や硫黄酸化物などの毒物を作り出す。例えば窒素酸化物のニトロソアミンは強力な発がん物質だ。また、窒素酸化物や硫黄酸化物は臭いが強いものが多く、悪玉菌が増えるとガスや便が臭くなる。

 悪玉菌の出すガスは腸管を麻痺させるから、悪玉菌が多いと便秘になりやすい。便が大腸にとどまる時間が長いと、その間に毒物が水に溶けて、体内に吸収されてしまう。それが尿、呼気、皮膚などから排出されると、口臭や体臭、肌あれなどが起こってくる。

 肉を食べ過ぎたときには、もうひとつ問題がある。肉を食べると、消化のために胆汁が分泌される。胆汁中の胆汁酸は普通は小腸で回収されるが、大量に分泌されると一部が大腸まで行ってしまう。すると悪玉菌が胆汁酸から二次胆汁酸を作る。ニトロソアミンはがんを引き起こし、二次胆汁酸はがんを促進する。つまり、肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上がるというわけだ。