「限界まで小型化、これはミラーレス一眼への挑戦状だ!」(鹿野貴司カメラマン)

 キヤノンは昨年、ようやく重い腰を上げて……いや、満を持して(?)「EOS M」を投入し、最後発でミラーレス市場に参入した。なかなかミラーレス一眼をリリースしてこなかったのは、「EOS Kissシリーズが売れなくなるから」なんて声もささやかれたが、実際のところフルサイズがどうのと騒いでも、一番の稼ぎ頭は紛れもなくEOS Kissシリーズ。だからEOS Mが発売された今、キヤノンがEOS Kissシリーズをどうしていくのかに興味があった。

 その答えは、“ミラーあり”の構造ながら、ミラーレス一眼並みに小さな一眼レフ「EOS Kiss X7」だった。兄弟機種「EOS Kiss X7i」との同時リリースだったが、特にX7は幅116.8mm、高さ90.7mmと、EVF(電子ビューファインダー)内蔵タイプのミラーレス一眼と互角の小ささだ。マウントからセンサーまでの距離が決まっているので、厚さはさすがに劇的な変化はないが、口径の大きなEFマウントでここまで小型化を実現したのはすごい。実際、レンズを外した状態で正面から見ると、マウントが思いっきり自己主張している。

単焦点のパンケーキレンズ「EF40mm F2.8 STM」と組み合わせたところ。レンズを付けたままでも持ち運びやすく、この組み合わせが流行りそうだ
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側面から見たところ。デジタル一眼レフカメラとは思えないほどのコンパクトさだ
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 ここまで小さくなると、競合する製品は各社のデジタル一眼レフのエントリーモデルだけでなく、EVF内蔵タイプのミラーレス一眼まで含まれてくるだろう。EVFには仕上がりをリアルタイムに確認できるという利点があるし、ここ最近の進歩は目を見張るものがあるが、見やすさや追従性などはまだまだ光学ファインダーに遠く及ばない。

 ピント合わせも、ミラーレス一眼では画面上のコントラストを基に検出するコントラストAFが一般的(一部例外はあるが)。ピントを前後にずらしながら探っていくので、どうしてもスピードが遅くなる。それに対して、一眼レフはミラーからAFセンサーへ光を導く位相差検出方式で、シャッターの半押しと同時にピントは合焦位置まで一気に動く。普段使いではその差もあまり気にならないかもしれないが、ピントの移動量が多い望遠レンズでは顕著になる。子供やペットの動きがある写真を撮りたい、という人にはやはりミラーレス一眼ではなく、ミラーのある一眼レフを薦めたい。とりわけ、キヤノンのEOSシリーズはAF性能に定評があるので、間違いのない選択といえる。

 そういった性能面を重視するならば、ひと回りボディーサイズは大きくなるが兄貴分のX7iを薦めたい。連写速度は、X7の秒4コマに対し秒5コマと高速。AFセンサーも、X7は精度の高いクロスセンサーは中央1点のみだが、X7iでは9点すべてに採用している。そして何より、背面の液晶モニターがX7のような固定式ではなくバリアングルだ。これは、ライブビューや動画撮影で大きな威力を発揮する。

 X7/X7iは、X6iよりライブビューの使い勝手が向上したのも大きなポイントだ。クリエイティブフィルターの効果が確認できるようになったり、キットレンズの標準ズームがSTM(ステッピングモーター)搭載の新タイプに変わり、ライブビューでもAFがスムーズに駆動するようになった。最近は観光地に行くと、一眼レフをライブビューで撮影している人をよく見かける。僕のように、古くから一眼レフを使ってきた人間はとても違和感を感じるのだが、X7/X7iでは「普段はライブビュー、望遠レンズを着けたり、暗い場所などカメラをしっかりホールディングしたいときはファインダー」といった使い方もアリだと思う。

 ただし、X7iのライブビューAFはX6iと同じ「ハイブリッドCMOS AF」なのに対し、X7は従来よりAF可能な範囲を広げた「ハイブリッドCMOS AF II」を採用している。アングルの自由度を取るか、AF性能を取るか……まあ僕ならアングルかな。

 全体的に見ると、X7が小型化を実現したこと以外は、X6iから目立ったスペックアップがないのも事実。正直、X6iや「EOS Kiss X5」のユーザーが無理をして買い替えるほどではないと思うし、ライバルであるニコン「D5200」の2410万画素が魅力的にも見えてくる。実際、X7/X7iの1800万画素という数字は、2010年2月発売の「EOS Kiss X4」から変わらない。さらに元をたどれば、2009年10月に発売された「EOS 7D」から採用されている。もっとも、センサーの技術は日進月歩なので、画素数が同じでも内容が何年間もまったく変わらないはずもなく、バランスの取れた1800万画素CMOSセンサーをじっくり熟成させているのだろう。

 実際のところ、この1800万画素というサイズは実用上何ら問題はなく、僕はEOS 7Dを使っているが、数値上では厳しいA1やA2といった大判プリントにも十分耐えられる。まだX7/X7iは実写していないので断言できないが、EOS 7Dから3年半も経っているので、同じ画素数でも撮れる絵は間違いなくきれいだろう。ということを考えると、思い切ってEOS 7Dを売って、バリアングルが可能なX7iに買い替えたくもなる。だが、EOS Kissシリーズがここまで熟成したら、そろそろEOS 7D MarkIIも……と思う今日このごろ。キヤノンさん、吉報をお待ちしております…!?