※この記事は日経ヘルス for MEN「筋トレで腹を凹ます」をもとに再構成しました。

 虫歯や歯周病が一気に悪化しやすい30~40代。ありがたいことに歯の治療技術はひと昔前よりもぐっと進化し、早期に受診すればむやみに削ったり神経を抜くことなしに健康な歯を保てるようになってきた。気になるインプラント治療など、知っておきたい歯の最新治療を詳しく紹介しよう!

教えてくれたのは…
桃井保子 教授
鶴見大学歯学部保存修復学講座。保存修復学、う蝕学を専門としている。
吉岡公成 理事長
吉晟会 岡本歯科。口腔内トータルケアを実践する歯のホームドクターを目指す。

働き盛り、歯はどんどん悪くなる!

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30~40代の歯
忙しさで歯の手入れをさぼりがち。加齢によって黄ばみが目立ち始め、歯ぐきもやせ始めると同時に治療した虫歯が再発したり、歯周病が悪化し始める
若い歯
黄ばみがなく美しい歯で口臭も出にくい。歯ぐきの血行も良く、メンテが良ければ虫歯菌や歯周病菌もすみつかない。だが歯の若さはいつまでも続かない……

加齢とともに歯は黄ばみ歯ぐきもやせる

 10代のころは気にも留めなかった歯の色。あらためて見てみると「ん? 白くない?!」と驚くかもしれない。「30~40代になると紅茶やコーヒー、赤ワイン、タバコなどによる着色汚れが進む。エナメル質も摩耗によって薄くなり、奥の象牙質が透けて歯が黄ばんで見える。また、磨き残しがプラークとして定着すると歯周病になるし、歯肉がやせることで露出した歯の根っこ部分の虫歯も増えてくる」と話すのは、鶴見大学歯学部保存修復学講座の桃井保子教授。

 一方、岡本歯科(東京都世田谷区)の吉岡公成理事長は、「疲れやストレスも歯の状態を悪化させる大きな要因になる」と指摘する。

「しばらくすると治まる症状」が危ないかも!

 忙しいからと、つい歯の治療を後回しにしてしまいがちだが「笑ったときの歯の状態が印象を左右する。口の健康状態こそ、仕事に影響すると考えてほしい。歯周病菌のすみかであるプラークがついている人は口臭がきつくなる」と桃井教授。

 男性は女性のように鏡を見る習慣がないため、せっかく出ているサインを見すごすことが多いのも働き盛り世代の共通点。「歯が染みたが、しばらくすると元に戻った、というふうに症状が治まったときに病状は進行している場合も。症状は体からの警告と受け取って早めに受診を」と吉岡理事長。さっそく次ページから、虫歯と歯周病についておさらいしよう。

虫歯

最新治療は「極力、削らない」温存の時代に

 「神様はよく創ったものだ、と感心させられるくらい、歯の構造はよくできている」と桃井教授。歯の一番外側は鎧(よろい)のように硬いエナメル質が、その下には象牙質がある。象牙質は、神経や血管が通っている歯髄(しずい)と「象牙細管」という多数の管を通じてつながっていて、この管に虫歯菌が入りこむと歯髄が感知し、管内でカルシウムやリン酸がサイコロ状の結晶を作り、虫歯菌の進入を阻止する。いつまでも自分の歯でかめるようにするには、健康な歯の組織を残すことが大切だ。「治療技術が進化したことにより、現在は極力削らない虫歯治療が可能になってきた」と吉岡理事長も話す。

これまでの治療
従来は、詰め物(インレー)をはめたりかぶせ物(クラウン)をかぶせて固定するのにう蝕部分を大きく削っていた。このため、歯の健康な部分まで大きく削り取ることに
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削ったあとに金属製の詰め物を施す。年月がたつと、詰め物が外れたり、歯と詰め物の隙間に虫歯ができるといったリスクも
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最新の治療
う蝕部分を赤く染色し、染まった部分のみを専用の器具を使って除去。健康な歯の部分は削らず神経も極力温存するため、治療後も歯の本来の働きを維持することができる
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接着技術の進化によって、詰め物やかぶせ物を隙間なく接着できるように。かぶせ物も、周囲の歯の色に合わせた強化プラスチックなどを選べば口元が自然な印象に
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 その一例が、接着治療(写真)。虫歯菌に侵された部分だけを削り取り、専用の接着剤を使って見た目も自然に近い詰め物を施す。「接着治療は治療経過も良く、メンテ次第で10年以上も虫歯を予防することが可能になっている。この方法がこれからの虫歯治療のスタンダードとなるでしょう」(桃井教授)。

最新の接着治療
金属で治してある臼歯2本(写真中央の2本)が、金属の下から虫歯になり、水がしみるようになってきた
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金属を外し、虫歯になっている部分を注意深く削り取る。このとき健康な歯をできるだけ残すよう努める
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接着剤で削った部分にコンポジットレジンを詰めたところ。悪い部分だけ削り、歯の形も色も元通りに修復
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別歯の断面図。右のように虫歯菌を染めてからかき出す。左くらい薄い色なら終了。これで健康な部分を削らずに済む
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虫歯 Q&A

Q 「神経を抜く」のは悪いこと?
 神経はできるだけ抜かないのが最新の考え方。「神経を取ると、象牙質が乾燥してもろくなり、ひびが入ることも。細菌への抵抗力が下がり、歯の寿命を縮めてしまう」と桃井教授。ただし、神経が通る歯髄にまで虫歯が到達すると、何もしなくても痛みが起こる「自発痛」が起こる。こうなると神経を取る必要がある。「虫歯になった象牙質を意図的に残し、虫歯の穴をきっちり封鎖。歯髄の働きで無菌化する歯髄温存療法という治療法もある」(桃井教授)。

Q 「接着治療ができる医師」の選び方は?
 積極的に接着治療を取り入れている歯科医院は、「日本歯科保存学会」や「日本接着歯学会」のホームページで確認できる。専門医や認定医の全国リストが記載されているので、チェックしてみよう。「ケガなどで歯が大きく欠けた、詰め物が取れた、歯の表面が変色したというときにも接着治療を行うことができる。できるだけ自分の歯を残す治療をのぞむ人、歯になんらかの悩みを抱えている人は相談してみるといい」(桃井教授)。