2011年9月の1号店オープン以来、価格破壊の高級料理店として飲食業界に旋風を巻き起こしている「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」。わずか1年あまりで銀座を中心に「俺のイタリアン」5店、「俺のフレンチ」4店をオープン。しかも全ての店舗で予約が1カ月待ちになるほどの盛況だ。

 低迷が続く飲食業界の新しいビジネスモデルとして注目が高まるなか、同店を経営するバリュークリエイトは、いよいよ和食に進出することを発表。立ち食いの高級和食店「俺の割烹」を2013年早々から銀座にオープンさせるという。しかもこれまでの小規模な系列店とは違い、席数100を超える大型店となる予定だ。同社では1日に3回転させるとして、300人以上の来客を見込んでいる。

 イタリアンとフレンチが絶好調な今、なぜあえて割烹に進出するのか。イタリアンやフレンチとは比較にならないくらい閉鎖的といわれる和食の世界で、これまでと同じビジネスモデルで成功できるのか。同社の社長で、ブックオフの創始者としても知られる坂本孝氏に聞いた。

同社で展開する「俺のフレンチ Table Taku」のメニューから。「生ウニのエスプーマ オマールエビとキャビアのジュレ」(1280円)、ラングスティーヌのカネロニ仕立て フォアグラ・トリュフソース(980円)、フランス産ウズラのフォアグラ包みトリュフソース(1280円)などと驚きの安さ
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「『俺のフレンチ』を1000店舗展開するのは無理」

 「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」が支持されている一番の理由は、呆れるほどのコストパフォーマンスの高さだろう。例えば「俺のフレンチ」は「シェ松尾」「ジョエル・ロブション」などの名店で活躍していたスーパーシェフを料理長として招き、高級店の2~3万円のコースとほぼ同じ内容の料理をひと皿1000円前後の価格、そして2倍のボリュームで提供している。しかもコスト管理の厳しい昨今の料理店とは逆に、経営側は高価な素材をふんだんに使って原価率を上げることを奨励。コストダウンに効果的な工場のセントラルキッチンによる集中調理はいっさい行わない。さらに驚きなのは、こうした業態でありながら立ち席中心の店舗スタイルで回転率を飛躍的にアップさせ、通常の高級レストランの何倍もの収益を上げているということだ。

 しかし「成功しているからといって、同じ業態で店舗数を増やすのには限界がある。同じ店が多くなりすぎると飽きられるし、特にフレンチの場合はミシュランで星を取れるレベルのシェフをどれだけ集められるかという問題もある。ミシュランに載っている店が250店舗あり、各店の料理長とセカンドとして働いていた料理人を合わせても500人。あまり知られていない店に力を持った料理人が同数いたとして、それを合わせても1000人。その人たち全てを引き抜くことは無理だから、とても1000店は作れないということになる」(坂本氏)。

 同じビジネスモデルで展開できそうなほかの料理ジャンルに目を向けたときに中華料理という選択肢もあったが、中華は低価格の店が多く、価格破壊をしても競争力は弱いと判断。逆に業界で誰も手を出していない業態として浮かび上がったのが「高級割烹」だったという。「和食は寿司、てんぷら、そばなどの専門店が多いので、高級割烹を価格破壊したら面白いのではと考えた」(坂本氏)という。

 実は同社では「俺の割烹」の布石として、密かに2つの店で高級割烹の価格破壊をスタートさせている。