この記事は「日経トレンディ2012年10月号(9月4日発売)」から一部を転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

「費用対効果」を再定義すべきとき

 ホテル業界の秩序が、そしてホテル選びの常識が、音を立てて崩れている。

 きっかけは、リーマン・ショックと東日本大震災。「出張」「旅行」「インバウンド(海外からの旅行客)」という、ホテルを支える3つの需要がそろって激減し、シティホテルはビジネスホテルの客を、そしてビジネスホテルはシティホテルの客を奪わざるを得ない状況に追い込まれている。

 設備水準はシティホテル、サービス水準はビジネスホテルという新しいタイプのホテルがここ数年の業界のトレンドだったが、最近ではこの傾向がさらに顕著に。東京・浅草で8月に開業したばかりの「ザ・ゲートホテル雷門」は、客室の高級感だけならシティホテルと同等かそれ以上だ。閉館したシティホテルの建物を引き継ぎ、文字通りシティホテルの設備を使ってビジネスホテルを開業する例もある。「京急EXイン 品川駅前」の客室に入れば、誰もが思うだろう。「ああ、これはシティホテルだ」と。

 このような状況下では、ネットのクチコミは頼りにならない。例えば、京急EXイン 品川駅前と、同じ東京の「スーパーホテル東京・日本橋三越前」を、大手宿泊予約サイトのクチコミで比べてみよう。利用者による星評価は、前者が4.27点、後者が4.22点。この0.05点の差は一体何だろうか。クチコミの中身を見てもわからない。どちらのほうが快適に過ごせるのか。どちらのほうが便利な立地なのか。どちらのほうが充実した設備なのか。全くわからない。

 単純に客室面積で比較すると、EXインのほうが2倍以上も広い。交通至便で、設備も圧倒的に充実している。なのになぜ、狭く設備も最小限なスーパーホテルと0.05点しか差がないのか。それは、スーパーホテルが単純に安いからだ。

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