前回掲載した「キヤノン『EOS M』、プロカメラマンが触った実感は?」に続き、EOS Mの発表会で実機を手にしたカメラマン2名のファーストインプレッションを紹介する。EOS Mを触って感じたこと、メーカーやファンに伝えたいことをまとめてもらった。

多くの写真ファンが期待する上位機種は望み薄なのか?
(桃井一至カメラマン)

 発表会場で「EOS M」を見た第一印象は、「外観は細部の作り込みがきめ細やかで美しい」「専用レンズの質感も高い」ということだった。IXYなどで築き上げてきたキヤノンのノウハウを持ってすれば当然ともいえるが、「よいモノを持っている」という感覚に浸れると感じた。無理に小型化を推し進めなかったボディーは凡庸に見えなくもないが、手にした感触や全体のバランスには好感が持てる。

 ただ、EOS Mはオリンパスイメージングの「PEN」やソニーの「NEX」、パナソニックの「LUMIX」など、ミラーレス一眼で先行するライバルシリーズと比べ、装備や機能面でのビハインドがいくつか見られる。これまでのキヤノン製品の隙のなさを知っている者からすれば、いささか疑問符が付く部分も多いのだ。

 現在のデジタル一眼市場は、ミラーレス機が約4割を占めるといわれている。ただ、これは日本国内での話であり、世界的に見ればまだまだ途上といえる。ミラーレス一眼は、日本をはじめとするアジア圏では盛り上がりを見せているが、米国やヨーロッパではレンズ交換式はいまだ一眼レフが主流なのだ。

 とはいっても、一眼レフのEOS Kissシリーズは、国内でもいまだ堅調な販売を見せている。そのようななか登場したEOS Mは、ミラーレス一眼の購入希望者が他社に流れるのを思いとどまらせるストッパー的な役割か、それとも後述する「遅れ」への時間稼ぎで、このあとに真打ちが投入されるのではないか…とも思わせるのだ。

 また、順当に考えれば、遠くない将来に上位機を投入し、ミラーレス一眼で先行するメーカーを崩しにかかると思われる。だが、EOS Mの記者発表会では鼻息荒いコメントが鳴りを潜め、「ようやくメドが付いた」という、後発の遅れを認めたコメントが出たのには驚いた。新マウントで、しかも「ミラーレス一眼購入者の6割以上が交換レンズ購入したいと考えている」とみずからプレゼンしているにもかかわらず、レンズのロードマップの発表がなかったのも異例だ。EFレンズ用のアダプターをレンズ2本付きのキットに標準で付属させるなど、EOS Mのシステム展開に注力するのかどうかが分からない姿勢も気になる。「ミラーレスと一眼レフの両方を伸ばしつつ、最終的には一眼レフに来てほしい」との発言からも、単なる通過点となるシリーズでしかないのかと感じた。とすると、ミラーレスの上級機は望み薄なのだろうか…。

 EOS Mの発表会では、今後の戦略が何とも読みにくい、もやもや感が残った。だが、9月末にはドイツでカメラ機器の展示会「フォトキナ」が、2013年1月初頭には米国で家電の展示会「CES」が開催される。2013年1月後半には、お膝元の日本でカメラ機器の展示会「CP+」が開かれる。つまり、この半年に3つの大型展示会が控えているわけだ。ひとまず、これらのイベントにアンテナを張りつつ、今後どのような発表がなされるのかを静観したい。

(文/桃井一至)