美術館や博物館などの「音声ガイド」が進化を続けている。著名人がナレーターを務めていたり、端末そのものに工夫があったり。展示会によっては入場者の3~4割が利用するという音声ガイドの進化の歴史を振り返ってみた。

 美術館などの入口で500円ほどを支払って端末を借りると、作品が生まれた背景など、展示作品の解説が聴ける音声ガイド。その音声ガイドが今、大きな進化を遂げている。

 1990年代、まだ日本に登場したばかりの音声ガイドは、端末で作品解説を読み上げる程度のシンプルなもので、日本は欧米に30年遅れていると言われていた。そもそもナレーションも端末のメーカーが制作している状況だったのだ。そんなクオリティーの問題と、「先入観を持たずに作品に接する」という戦後の美術教育の影響もあってか、当初、音声ガイドはなかなか受け入れられなかった。

現在、一般的に利用されているのは10キー入力式音声ガイド端末の最新モデル
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 そんな時代を経た1990年代後半、アート アンド パートとA&Dオーディオガイドの2社が相次いで設立される。欧米のトップ音声ガイド制作会社と手を組んだこの2社が、日本の音声ガイドを進化させてきたと言っても過言ではない。

 その一例が、著名人をナレーターに起用したこと。1976~79年に米国内を巡回した「ツタンカーメンの秘宝展」では、女優のメリル・ストリープがナレーションを担当して展示会を大ヒットさせたが、日本で著名人ナレーターの音声ガイドが登場したのはその20年後、1999年の「パリ・国立ピカソ美術館所蔵ピカソ展」(上野の森美術館)だ。当時人気だったフジテレビの女性アナウンサー6名がナレーターに起用された。「アナウンサーが実際に案内してくれると思っていた方もいらっしゃいました(A&Dオーディオガイド)」という逸話が残るほど、当時、音声ガイドの認知度は低かった。

 ナレーターに著名人を起用する展示会が増え始めたのは、2002年の「華麗なる宮廷 ヴェルサイユ展」(神戸市立博物館、東京都美術館)で、元宝塚歌劇団のトップスター稔幸が起用されたころから。その後の10年ほどで同様の展示会は少しずつ増え、現在では俳優・女優が画家や作家に扮したストーリー仕立ての音声ガイドなども登場している。

 企画展ばかりでなく、常設展示の美術館や博物館も、2002年ごろから音声ガイドを導入するようになっていった。2007年には、サントリー美術館と森美術館も音声ガイドを導入。美術館の音声ガイドには、来場者に対するメッセージ性の強いものも多く、昨年オープンした「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」では、季節や天候によって冒頭の挨拶を変えるなど、工夫を凝らしている。