ラティフ・ヤヒア氏。1964年6月14日イラク、バグダッド生まれ。バグダッド有数の実業家の息子。エリート学校に入学したことでフセインの長男、ウダイ・フセインとクラスメートになるが、ウダイの行動に辟易し専門を工学から法律に移す。大学卒業後、当時強制であった軍隊に入隊。前線からウダイに呼び戻され影武者にならざるをえなくなる。1987~1991年まで影武者を務め、亡命。国際法律博士となる
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 イラク共和国大統領サダム・フセインの長男として、父親の権力を背景に極悪非道の限りを尽くした暴君ウダイ。その影武者として生きることを余儀なくされた男、ラティフ・ヤヒア氏の自伝を映画化した『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』が1月13日から公開される。これを機にヤヒア氏が来日。インタビューに応じた。

映像化できないほどショッキングな体験

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 『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』では、ウダイの常軌を逸した行動が描かれ、観客の背筋を凍らせる。例えば街中で目を付けた女子高生を拉致し、死へと至らせる。結婚式のさなかに花嫁を強姦し、自殺へと追い込む。父親の側近をパーティーの最中、客の面前で斬殺……。そのありさまはエジプトのムバラク前大統領に「異常者」と言わしめたほどだ。

 ヤヒア氏は、バグダッド有数の裕福な家庭に生まれ、堅実な人生を歩いていたにもかかわらず、独裁政権下において狂気の男の影武者を務めざるをえなかった。1987年から1991年に影武者を務めた後、ヨーロッパに亡命。妻と娘とともにアイルランドで暮らすが、今もなおトラウマに苦しめられている。

 「イラクから亡命して20年が経ちますが、今も不眠に悩まされ、ぐっすり眠ることはできません。この映画を見たときは妻が横で『映画だから』と言ってくれたのですが、背中に残る拷問の傷跡がうずき、気持ちを落ち着かせるための精神安定剤が必要でした」(ヤヒア氏)

 その体験はあまりにショッキングで、映像化できなかったものも多いという。

 「拷問、強姦の部分で映像化できないことは多かったようです。もし体験通りに描いたら、観客は5分と見ていられなかったでしょう。拷問、強姦は毎日のように行われていましたが、今も目に焼き付いているのは強姦の被害者の顔です。強姦をする係は別にいたので私がそれを強いられることはありませんでしたが、その場にいて見ていることを強要されました。これはウダイの心理作戦のひとつなんです」(ヤヒア氏)

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