地デジ化以上に、これからのテレビ視聴をガラリと変えそうな“番組全部録画”すなわち“全録”。前回の記事でみたように、大容量HDD搭載の長時間×多チャンネル録画機の登場によって現実的になったわけだが、録画機の進化からみても、ひとつの分岐点を迎えたといえそうだ。

 高画質化を目指してアナログからデジタルへ、そして多チャンネルへと、これまでビデオレコーダーは進化してきた。これを突き詰めると「究極の家庭用AVサーバー」という方向がある。たくさんのコンテンツをライブラリ化して一元管理できるようになり、次のステップは、利用シーンにあわせて、好きな端末でシームレスに楽しめるようになることだ。たとえば、リビングでは大画面のテレビで楽しみ、自分の部屋や膝の上では中画面のタブレット、外出したらスマホで、といった使い方だ。ところが多機能になるにつれて、操作も複雑になり「使えるのはパパだけ」になっしまう。

 多チャンネル録画機が注目される理由のひとつには、ビデオレコーダーとしてのもう一方の進化とも言える、複雑で面倒な予約操作から開放されたいという期待である。

 そうしたシンプルな方向を目指したのが、バッファローの『らくらくTVレコーダー ゼン録』「DVR-Z8」だ。同社の石井希典デジタルホーム事業部長によると「本来のテレビ視聴は受動的なもの。ところが、録画するためには、番組を選択して予約するといった能動的な操作が必要です。どうしたら受動的な視聴スタイルのまま録画できるか。突き詰めた結果が、全部の番組を録っておくこと。それも、取扱説明書を見ないで使えるレベルでないといけません。そこで思い切り機能を割り切って、極力簡単にセットアップなしで使える製品を目指しました」という。

 BSやCSの視聴をはずし、DVDやブルーレイドライブもない割り切り方は、ハンパないと感じた。「ここまで割り切ることは、他社ではできないと思います。AVメーカーなら必ず、BSやCSをつけ、ブルーレイもつけなければならない。結局、多機能になります。それでは受動的に見ている方のニーズに合いません。逆に初期からこだわったのは、8日間分の録画。1週間前の同じ番組を見られるようにすることでした」と石井本部長は言う。

 さらに「1日中テレビをつけている人にとっては、予約をするほどではないけれど見てみたい番組って、いっぱいあると思うんですよ。裏番組で何をやっているかザッピングしたり、普段見ない時間帯や、寝ている間の番組を見る。そうした視聴ならこの画質で、1週間で消えてしまってもかまわない。そんな使い方が楽しいはずです」(同氏)。

 常時見られる番組が1週間分になるといった感覚だが、それ以外の余計な機能は持たせない。そうした逆転の発想が、ビデオレコーダーの新たな方向性を示したといえるだろう。