問題はハイエンド生活が身に付くか否か
果たしてK3003は誰が買い、どのように使うのか。装着のイージーさは普及価格帯のカナル型と同じ。だからなんの気負いもなく、世界最高のイヤホンサウンドが楽しめる。これがK3003の傑出した特徴ではないかと思う。超がつくほどのハイエンドなのに、使ってみるとフツーなのである。
ハーマンインターナショナルはこの製品をオーディオファイルだけでなく、「富裕層向け」とも言っている。価格を考えればそうなるだろう。試聴のために電車内で取り出してみたが「何かの拍子に落としでもしたら」とか「誰か悪い奴がいて盗まれでもしたら」と思うと、ちょっと怖くて使えなかった。そもそも、このイヤホンを買うような人は電車で移動しないのではないか。装着性は万人向けでも、私には身に付きそうもない気がした。
薄っぺらなイメージで申し訳ないが、例えば西麻布のスーパーにメルセデスでお買い物に行くような人が、バケーションに出かける際に、空港のロビーで退屈しのぎにちょっとだけ使うような、そういうポジションの製品ではないか。もちろん彼女は自分で買ったわけではなく、彼氏か旦那さんにプレゼントされたのだ。余計な接点が増えて音に影響するからと、マニアには敬遠されがちなリモコン付きのK3003iも用意されているのも、そういう理由だろう。
とはいえ13万8000円だ。当たり前の成人がマトモに働けば、買って買えない値段ではない。些細な音の違いが気になるオーディオファイルなら手に入れたいと思うだろうし、ぜひ手に入れて使ってほしいと私も切に思う。その場合、K3003は省スペースに貢献する。もしポータブルのヘッドホンアンプがなくても、大抵のイヤホンをヘッドホンアンプに接続した状態より、おそらくは良い音で聴けるからだ。
もうひとつ気になるのは他社製品のポジションだ。これが13万8000円で売れる製品の代表的な商品だとすれば、この価格を超える際には、この製品を超えるクオリティーを示さなければならない。既製品以外では、個々人の耳に合わせたモールド成形のカスタムイヤホンも買える価格である。仮にこの価格帯に市場ありということになっても、簡単に割って入ることはできないだろう。
イヤホンもこのレベルまで来ると、耳の良い開発者や製品に仕上げる技術者、それを組み立てチューニングする優秀な職人がいなければ成り立たないわけで、そもそも生産を海外に移し、組立の簡素化でコストを下げて勝負する量産品の世界とは、違うルールの上に成り立っている製品だ。
ちなみにK3003のケーブル込み重量は21gだった。最近の金相場はグラム4200円程度というから、K3003は金よりも高い。もし金ならお金に換えられるが、K3003を買ってもそうはいかない。そんなふうに考える人は、13万8000円のイヤホンなど買うべきではないのである。私はそんな風に諦めたが、あなたはどうだろうか?
(文/四本淑三)











