ふくよかな甘みが口いっぱいに広がり、ほんのりとした酸味と微かな発泡が喉ごしの爽やさを演出する。噂通り、「生マッコリ」は旨かった。韓国料理との相性もばっちりで、杯もどんどん進んでしまう。

 2000年代半ばからの韓流ブームをきっかけとして、日本では、数年前から「マッコリ」が注目され始めた。韓国の人気俳優チャン・グンソクのテレビCM起用からもわかるように、最近のマッコリ人気を牽引しているのは“女性”たちだ。

女性の間で注目され、ブームの兆しが見え始めている「生マッコリ」と韓国料理
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凍らせてシャーベット状にした生マッコリは、またひと味ちがう美味しさ
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 マッコリブーム到来の兆しが見え始めるなか、美味しい“生”のマッコリが飲めると評判の店があると聞き、早速、取材に訪れた。平日だというのに、JR大久保駅から続く大久保通りは、女性でごった返していた。歩くこと数分、メインストリートから少し横道に入ったところにその店はあった。名前は、ずばり「生マッコリ家」だった。

 生マッコリの旨さをすっかり堪能した頃、ある疑問がわいた。なぜこれまで「生マッコリ」と出会う機会がなかったんだろう?

 答えは実に単純だった。数年前まで、日本には「生マッコリ」が存在しなかったのだ。日本で初めて「生マッコリ」をつくり、店に出し始めたのが、「生マッコリ家」の店主、ソウル酒造の韓吉洙社長だった。

 以前から日本にも韓国の「マッコリ」は輸入され、出回っていた。しかし、「昔、日本の友人から、よく言われました。『なんで韓国で飲んだマッコリは美味しいのに、日本で飲んだら味がちがうの?』って」。そう韓さんが振り返るように、かつて日本に輸入されていた「マッコリ」と、地元韓国の“生(なま)”のマッコリとは、別物だった。

 韓国で古くから飲まれて来た「マッコリ」は、酵母菌で米を醗酵させてつくる。乳酸菌が生きたままで、醗酵が進行中のマッコリは、発泡する。乳酸菌が生きたままのキムチをビニール袋に入れておくと、袋がパンパンに膨れるのは、同じ理由だ。

 逆に言えば、乳酸菌醗酵が続いている生マッコリは、乳酸がどんどん増え、酸っぱくなり、味が変わってしまう。そこで、日本に輸入するときは、乳酸菌を“殺菌”し、醗酵を止めていたものが使われた。それゆえ地元で飲まれている「乳酸菌が生きたままのマッコリ」を飲むためには、韓国に行くしか方法がなかった。