2011年4月4日発売の日経トレンディ5月号では「検証 東日本大震災」と題し、震災が通信機器やサービス、消費の現場などにどう影響を与えたのか、緊急特集を掲載している。大きな影響を受けた業界の一つがレジャー施設だ。福島県いわき市の水族館、アクアマリンふくしまの取材中に、本誌記者は震災に遭遇した。

 震災発生からもうすぐ1カ月が経とうとしている。交通機関やメーカー、農業や水産業など、東北地方に拠点を置く幅広い産業が多大なダメージを受けたが、同様に影響を受けたのがレジャー施設だ。

 東京でも上野動物園が3月いっぱい営業を休止し、東京ディズニーリゾートは未だに営業再開日が決まっていない。直接被災した東北では、短期間での営業再開が見込めなくなってしまった施設も数多い。展示していた魚のほとんどが飼育不可能になり、ゼロからの再出発になってしまった水族館「アクアマリンふくしま」は典型例だ。この施設は、発売中の日経トレンディ5月号で大きく取り上げられる予定だった。

そろそろ取材終了というとき、地震は起きた

 東日本大震災が起こった3月11日14時46分。取材のため、記者は福島県いわき市小名浜にある「アクアマリンふくしま」にいた。5月号に掲載する「レジャー施設」特集の取材のためだ。

全国でも屈指の人気水族館として知られていたアクアマリンふくしま(画像クリックで拡大)

 小名浜2号埠頭に建つアクアマリンふくしまは、年間100万人近い集客を誇る全国でも屈指の人気水族館だ。記者とカメラマンは3月11日、カメラマンのクルマで東京を出発し、常磐道を走り小名浜に到着。13時から、副館長・久保木光治氏への取材をスタートした。

 同氏に展示のポイントなどを聞き、撮影をしながら、見学コースを進む。当日は平日の昼間で、混雑というほどではないが、小さな子供連れの家族やデートで訪れたカップル、そして年配者のグループなどで賑わっていた。カツオやエイなどが力強く泳ぐ黒潮と、カジカやソイ、タラバガニがのんびりと住む親潮、2つの水槽が隣り合う大水槽「潮目の海」の前では、多くの人々が足をとめてその美しさに見とれていた。

2つの海流が交わる「潮目の海」を再現していた水槽。左の水槽が親潮に当たり、水温は低く魚もゆっくりと泳ぐ。右の黒潮は逆に暖かく、イワシの群れなどが勢い良く泳いでいた(画像クリックで拡大)

 本館を一通り見学し、続いて本館の奥にある体験型施設「アクアマリンえっぐ」へ進む。屋内には、水槽の下にもぐって岩場に生息するイセエビを腹側から見るなど工夫を凝らした数々の水槽が並び、屋外に出ると釣った魚を実際に調理して食べることができる釣り堀がある。子供をターゲットにした施設で、実際、何組もの子供連れの家族がいた。この施設の見学が一通り終わり、そろそろ取材終了というとき、地震は起きた。

 激しい横揺れがしばらく続いた。施設内に並ぶ水槽から水が溢れ出し、床が徐々に水浸しになる。しかし記者も含め、「アクアマリンえっぐ」内にいる人々は冷静で、騒いだり、泣いたりする人はいなかった。自分がどれだけの地震を体験しているのか、実感がないのだ。スタッフの指示にしたがい、ひとまず全員、施設横の庭へ出たが、このあと起こる事態など考えつかず、ただ庭で周囲の人たちと話を続けていた。