“真っ赤なハート”で乙女心をわし掴み

ハート形のフォルムが愛らしい「トマトベリー」。フルーツ感たっぷりの甘味があるジューシーな味わいが人気。レストランや菓子店など調理のプロからも「トマトベリーを使いたい」との問い合わせが寄せられることがあるという(画像クリックで拡大)

 ミニトマト(プチトマト)も同じように見えて、品種は相当数開発されている。その一つ、トキタ種苗の「トマトベリー」は丸型や楕円型ではなく、ぷっくりと愛らしいハート型に実る珍しい品種だ。

 誕生は8年以上前にさかのぼる。育種担当者は意図したものと違う形状に実ったミニトマトを見て、完全に失敗作だと思った。しかし、同社の時田巌社長が自宅に持ち帰ったところ、2歳の娘がそのミニトマトを見て「イチゴ」と言ったという。それを聞いた社長はトマトとストロベリーからなる造語「トマトベリー」をひらめき、商品化に至った。

 トマトベリーはビジュアルだけでなく、味もフルーツを思わせる。甘みが強くて、酸味は少なく、肉厚でジューシー。トマト特有の青臭さはほとんどない。そのままフルーツ感覚で食べるほか、サラダやマリネなどの前菜、冷製パスタやピザといったイタリア料理、ケーキやゼリーなどのスイーツにも合うという。

 「見た目のかわいさと味のよさで、女性に大人気の品種です。トマトに求める味は性別や年代によって違って、女性は甘くフルーツっぽいものが好き。男性は酸味があるものを好む傾向にあります」(トキタ種苗 大利根研究農場育種第一部主任 中野将規氏)

 年代で言えば、50代以上の世代は青いトマトを流通過程で完熟させていた時代の味に慣れ親しんでいるので、比較的、酸味が強いトマトを好むという。30~40代は桃太郎のような、甘味と酸味のバランスが取れた味を求める。そして、若年層は菓子を食べ慣れた世代なので甘味の強いものを好む一方、しっかりと食育を受けているので栄養価などに対する要求は高い。

 種苗メーカーではこうしたトレンドを踏まえて新品種を開発したいところだが、新たに開発した品種が実際に生産・出荷されるまでには通常10年近い歳月を要する。言い換えれば、今日の市場に出回っている野菜は種苗メーカーが10年前に「こういう野菜が求められるだろう」と予測して開発したものだ。近年の個性的な野菜も例外ではなく、種苗メーカーはこれら野菜をどういった経緯で開発したのだろうか。