フラットでクセのない特性 NoiseGardも従来機種より効果大

 装着してみると、しっかりしたホールド感がある。イヤーパッドも肌に密着するため、遮音性の高さを感じる。ノーマル状態(SRS WOW HDオフ、NoiseGardオフ)で聴いてみると、低域から高域までフラットな印象だ。実売5万9800円という価格からすると、もう少し低音域の空気感や、高音域のきらめき感が欲しいところ。だが変なクセがないため、ジャズやフュージョンからロック、クラシック、女性ボーカルまで幅広くこなしてくれる。

 NoiseGardをオンにすると、音の印象が一変する。楽曲非再生時にNoiseGardをオンにすると、部屋内にある電子機器の動作音や換気扇のファン、電車の走行音といった暗騒音がグッと抑えられて静かになる。だが人間の声などの中音域はあまりカットされていないため、人の話し声まで聞こえなくなるということはない。

 ただし楽曲再生中にNoiseGardをオンにすると、途端に音の特性が変わるのが分かる。ふくよかで広がりのある低音域はしぼんでしまい、高音域も抑えられ、中音域が持ち上がる印象だ。中音域は解像感が上がったように聞こえるが、どこか不自然にシャープネスをかけたような雰囲気になってしまう。電車内での暗騒音はかなり抑えてくれるものの、音質のバランスは明らかにNoiseGardオフの方がいい。騒音レベルを抑えて若干不自然な音を聴くか、それとも騒音はあるものの自然で伸びのある音を聴くか、痛し痒しといったところだ。

 SRS WOW HDボタンを押すと、米SRS Labs.が開発した音響技術「SRS WOW HD」がオンになる。すると今度はボーカルの中音域が落ちて低音域が持ち上がって聞こえてくる。印象としては低音域はそのままに、中音域が下がるような感覚を覚えた。NoiseGardのみ、SRS WOW HDのみをオンにするよりは、この2つをどちらもオンにすることで、低音域から高音域までのバランスがよりフラットになるような感じを受ける。だがどちらも若干不自然な印象があるため、やはりNoiseGardもSRS WOW HDもオフにするのが音質的には最強と言えるだろう。

ワイヤレスではないが、MM 550 TRAVELのライバル機となるボーズのノイズキャンセリングヘッドホン「QuietComfort 15」。実売価格は3万9900円(画像クリックで拡大)

 「ノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホン」として見ると、MM 550 TRAVELのライバル機として挙げられる機種は数少ない。ボーズが2009年9月に発売したノイズキャンセリングヘッドホン「QuietComfort 15」(QC15)はワイヤレスではないため横並びの比較はできないが、QC15の方がノイズキャンセリング機能の素性は確かに思えた。

 街中でもかなりの騒音がかき消えてしまうQC15に対し、MM 550 TRAVELは全体的に抑えられるというレベルで、「静寂が訪れる」というほどではない。ただしQC15はノイズキャンセリング機能が高すぎて、ともすると吸い込まれるような違和感を覚える場合もある。そういう意味では、MM 550 TRAVELはそれほど違和感が少なく、誰にでも使いやすいと言える。

 ノイズキャンセリング機能のオン・オフによって音の印象が変わってしまうのも致し方ないところだろう。ボーズのQC15は電源をオンにすると自動的にノイズキャンセリング機能もオンになり、その状態でなければ音楽を聴くことができない。QC15は単4形電池1本で駆動する点が手軽だが、電池が切れると全く音楽を聴けなくなってしまうデメリットもある。MM 550 TRAVELはノイズキャンセリング機能をオンにしてもオフにしても、はたまた電源が切れても音楽を聴ける。音の印象は変わるものの、通常はオフにして聴きつつ、電車内や飛行機内ではオンにするといった使い分けができるのは魅力的かもしれない。

2009年11月に発売されたオンイヤータイプのノイズキャンセリングBluetoothヘッドホン「MM 450 TRAVEL」。直販価格は4万9800円(画像クリックで拡大)

 コンパクトで持ち運びやすい「MM 450 TRAVEL」も完成度は高かったが、オンイヤータイプという形状からノイズキャンセリング機能の効きはいまひとつだった。だがMM 550 TRAVELはオーバーイヤータイプで遮音性が高いため、ノイズキャンセリングの効能もしっかりと得られる。

 iOS 4.1を搭載したiPhoneで使用してみたが、曲送りや曲戻し、再生・一時停止が手元で操作できて快適だった。Bluetoothヘッドホンのデメリットの一つとして「音の遅れ」が挙げられるが、それもほとんど感じられない。『太鼓の達人』や『Dance Dance Revolution』などの“音ゲー”も快適にプレーできた。ビデオPodcastで動画を再生した際にも、映像と音のずれを感じることはなかった。

 ワイヤレスかつ良い音で音楽を楽しみつつ、ノイズキャンセリング機能も欲しい。そんな欲張りな人にお薦めのモデルだ。

(文・写真/安蔵 靖志=日経トレンディネット)