7月11日、4年に1度のサッカーの祭典「ワールドカップ(W杯)」が幕を閉じた。1カ月にわたる大会期間中、ピッチ上では様々なドラマが展開されたが、多くの日本人にとって印象深かったのはやはり日本代表のひたむきな戦いぶりではなかったか。国外で開催されるW杯で初めて決勝トーナメントに進出した日本代表の奮闘は、多くの国民に最後まであきらめない勇気と感動を与えた。
実は今回、もう1つの“日本代表”も大会の盛り上げに一役買っていたのをご存じだろうか。国際サッカー連盟(FIFA)のオフィシャルパートナーであるソニーだ。選手たちが熱戦を繰り広げたピッチ上に設けられた広告看板に、「SONY make.believe」の文字が映し出されたのを目にして、その存在を知った人も多いことと思う。
現在、FIFAのスポンサーには最上位の「オフィシャルパートナー」が6社、その下のランクにあたる「W杯スポンサー」が8社ある。ソニーがFIFAと結んでいる契約は前者で、他にはアディダス(独)、コカコーラ(米)、VISA(米)、エミレーツ航空(UAE)、現代・起亜自動車(韓国)といったグローバル企業が名を連ねる。FIFAとの契約はW杯の開催に合わせて4年を1つの単位として行われるが、ソニーは南ア大会と次回のブラジル大会を含む2007年から2014年までの2期8年間、世界中で展開されるFIFAの活動を支援することを約束。そのスポンサー料は約330億円に上り、大会でのブース出展など様々な関連事業費を合わせると、その費用は1000億円に迫るとも言われている。
これほどの巨費を投じるだけの価値があるのかと疑いたくなるが、治安問題が懸念されていた南ア大会も成功裏に終わり、全64試合で集めた観客は300万人を突破。史上3番目に多い数字を記録した。W杯をテレビで視聴した全世界の延べ人数も、2006年ドイツ大会の約260億人を上回るといわれており、その経済波及効果は計り知れないものがある。また、アフリカ大陸の一番の先進国である南アやBRICsの一角として経済力をつけてきたブラジルでのW杯開催を支援することは、新興国で自社ブランドの価値を高めて市場拡大につなげるうえで大きなメリットだ。これらを勘案した結果、「投資に見合う価値がある」とソニーは判断したのだろう。
「W杯のソニー」で他社との差別化を狙う
今回ソニーが、W杯という世界最大の広告塔を使って宣伝に力を注いだのが同社の技術を結集した最先端の3Dだ。映画『アバター』が公開されて以降、3Dを使った映像が世界的に注目を集めており、日本国内でも4月に先陣を切ったパナソニックをはじめ、ソニー、シャープ、東芝の各社が家庭用3Dテレビの開発・販売でしのぎを削っている。
そこで、ソニーはW杯というキラーコンテンツを使って自社の3Dを徹底アピール。治安が悪い南アでの試合観戦をあきらめたサポーターたちに、お茶の間でも臨場感あふれる3D映像でサッカーを楽しんでもらい、「W杯のソニー」を広く印象づけるのが狙いだ。
日本ではFIFAスポンサーとしてのソニーの認知度はまだまだ低いが、南ア現地に足を運んでみると積極的なマーケティング活動を展開しており、大会におけるソニーの存在感は相当なものだった。
その発信基地として中核的役割を果たしていたのが、ヨハネスブルグの高級住宅街サントン地区にあるショッピングモール『ネルソン・マンデラ・スクエア』の中庭に設営されたドーム型パビリオンだ。240人収容が可能な3Dシアターで、ここを訪れた人は無料で3D映像を楽しむことができた。草原で生活する野生動物のサファリ映像、3Dカメラで撮影した試合のハイライト、キャラクターとして起用するブラジル代表のMFカカのコマーシャル映像、コロンビア出身の歌姫シャキーラが歌い踊る大会公式ソング「WAKA WAKA」の3Dミュージックビデオの4本が、スクリーン脇に併設されたスタジオから語りかけるキャスターの案内で次々に上映されるのだ。
キリンが長い首を伸ばして木の芽を食べるサファリの臨場感もかなりのものだが、カカが蹴ったボールが飛んでくるシーンでは、思わず声を上げてよけてしまう。3Dならではの迫力が存分に味わえる構成になっており、連日約3000人もの入場者を記録する大盛況となった。大会期間中に350回の上映を行い、総入場者数は6万8000人に達した。












