前回紹介した「TwitterとUstreamで曲が誕生、向谷 実氏が試みた「音楽産地直送」とは」では、向谷 実氏と中西圭三氏がUstream+Twitterを利用して作曲や歌詞募集、デモテープ制作にこぎ着けた画期的な出来事を紹介した。ユーザーの生の声を取り入れながら進行するこれまでにない試みが、インターネットで大きな話題となった。

 楽曲制作の過程が配信されると、向谷倶楽部に賛同するアーティストが次々と参加を表明。Ustreamでも活躍しているDJ TARO氏、サッシャ氏、コーラスとして坂本美雨氏、さだまさしさんなどのプロデューサーとして知られる倉田信雄氏などなど、豪華メンバーによるレコーディングが実現した。

「向谷倶楽部」の参加メンバー。左から中西圭三、熊倉和昭(作詞)、向谷 実、宮崎隆睦(サックス)、小林千早都(作詞)、神保彰、斉藤英夫、鳴瀬喜博、サッシャ、坂本美雨、DJ TARO(敬称略)
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収録に使われたランドマークスタジオのAスタジオは、吹き抜けのメーンフロアと4つのブースがある広々としたスペース(画像クリックで拡大)

 レコーディングされた2曲は、すでにitunesなどで発売されており、ランキング上位を維持している。実際の曲を聴きながら本コラムを読んでいただければ幸いだ。

 このプロジェクトには前代未聞の取り組みがいくつもあるが、その最たるものが「8チャンネルのUstream並行放送」だ。地上波に例えるなら、NHKから民放各局がすべて「向谷 実×中西圭三プロジェクト」を生中継するようなものだ。

 なぜマルチストリーム放送が必要なのか。理由は、パートごとに独立して中継するためだ。向谷氏は「音楽を作る現場を、すべて可視化したい。例えば、ドラムのセッティングやマイクのセッティングなどをそれぞれ見ていただきたい」と述べている。メーンとサブの2チャンネルに加えて、ボーカルに1チャンネル、ドラムに1チャンネル……と、パートごとに計6本の独立した映像が配信された。

 そのため今回は、3チームのプロフェッショナルがレコーディングに協力している。まずはBSフジの中継スタッフ。衛星放送用の収録に加えて、Ustreamのためのマルチチャンネル用も収録するため、固定カメラ6台、移動カメラ6台の合計12台のカメラが用意された。

「向谷カメラ」「中西カメラ」といった専用のカメラマンを含め、BSフジからは総勢で20名近くのクルーがスタジオ入りした(画像クリックで拡大)

 続いては、「孫 正義×佐々木俊尚『光の道』」などの大規模Ustream放送を担当したJUNS STCW(ジュンズ ストリーム カウ ボーイズ)のスタッフ。カスタマイズPCメーカーであるJUNSの山中 潤氏を中心に、BSフジから提供された映像を8チャンネルのUstreamとして配信した。

JUNS STCWの配信卓。JUNS専用のチャンネルでは、別のカメラを使ってオリジナル映像も配信(画像クリックで拡大)

 最後は、マルチチャンネル表示サイト「USTWRAP(ユーストラップ)」のスタッフだ。マルチチャンネルの最大の魅力は、視聴者が自分の好きなパートの映像を見られること。その手段として「mmclub(向谷倶楽部公開レコーディング特設マルチチャンネルページ)」を提供したのがゆすとら氏だ。

特設ページでは、複数のUstreamを1画面で見ることができ、自由に切り替えることも可能(画像クリックで拡大)