「タバコが吸える店がなくなる?」 厚生労働省の受動喫煙防止に関する通知が、飲食店業界に波紋を呼んでいる。神奈川県では受動喫煙防止の条例が施行され、県内の飲食店が対応を迫られているなど、飲食店の“全面禁煙”への流れが加速しているのが現状だ。

 2010年2月25日、厚生労働省は「受動喫煙防止について」と題した通知を全国の各自治体に送付した。内容は、不特定多数の人が利用する施設(飲食店や百貨店、宿泊施設、公共施設など)においては全面禁煙とするように要請するものだ。これまでの喫煙専用スペースを設けたり、時間帯で禁煙・喫煙を分けたりするといった「分煙」ではなく、より積極的に禁煙の方針を打ち出すことで、受動喫煙を防止する狙いがある。さらに4月1日、神奈川県では「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」が施行。受動喫煙防止のための具体的な指針と内容を盛り込んだ、全国でも初めての条例だ。

 特に神奈川県の条例に関しては、条例が適用される施設の区分、罰則規定などが細かく規定されており、県内の飲食店に大きな影響を与えている。例えば、ファストフードのマクドナルド、ファミレスチェーンのロイヤルホストは、3月1日から神奈川県内の全店舗で全面禁煙をスタートさせた。

 だが気になるのは、居酒屋やバーなど、アルコールを提供している飲食店の対応だ。「酒を出す店はタバコも吸える」というイメージは強い。それならば、居酒屋やバーは全面禁煙にどう対応するのか。

 いち早く、運営する全レストランを禁煙としたグローバルダイニング。同社は現在、「ZEST CANTINA(ゼスト キャンティーナ)」や「権八」といったダイニングレストランを中心に、全国で63店舗を展開している。厚生労働省の通知を受け、3月1日から全レストランで全面禁煙とすることを決定した(シガーバー1店舗を除く)。ディナータイムにはビールやワイン、日本酒を提供している店舗も多いが、なぜこのような思いきった決断ができたのか。

 「もともと、“お客様に健康と喜びを提供する”という企業理念がありましたから、全面禁煙は自然な流れ」(グローバルダイニング 営業グループ担当の山下優子氏)という。

 全面禁煙の実施にあたっては、店頭にポスターを張る、常連の喫煙者には声掛けを行うなどして、利用客に周知した。「07年から全店舗でエリア分煙・時間分煙を行っていましたから、大きな混乱はありませんでした」(山下氏)。また、気になる全面禁煙後の売り上げについても、「一部の店舗ではディナータイムにわずかな売り上げの減少も見られましたが、大きな影響はありません。家族連れが増えるなど、これまでとは異なる客層も入るようになりました」(前同・山下氏)という。

全面禁煙に当たって、グローバルダイニングの店舗に張り出された告知ポスター。「利用客の目に留まるよう、ずらっと並べて貼り出した店舗もありました」(グローバルダイニングの山下氏)(画像クリックで拡大)

グローバルダイニングは「ZEST CANTINA(ゼスト キャンティーナ)」や「権八」といったダイニングレストランを中心に、全国で63店舗を展開(写真は「ゼストキャンティーナ 恵比寿」)(画像クリックで拡大)