※この記事は日経エンタテインメント!(5月号)の記事を転載したものです。購入は こちら

 3月7日(日本時間8日)に発表されたアカデミー賞。作品賞など6冠に輝いたのは『ハート・ロッカー』。キャスリン・ビグローは、初めて女性の監督賞受賞者となった。『アバター』は撮影、美術、視覚効果の3冠にとどまった。

ハート・ロッカー

イラクで爆弾処理の任務にあたる米国軍兵士を描いた戦争ドラマ。脚本賞を受賞したマーク・ボールは、実際にバクダッドで取材した体験を基に脚本を書いた。(ブロードメディア・スタジオ配給/公開中)(画像クリックで拡大)

 なぜ『アバター』は敗れ、『ハート・ロッカー』が勝ったのか。順を追って解説しよう。

 今年から作品賞の候補作が5本から10本に増えた。大きな理由は、一般観客にアカデミー賞へ注目してもらうことだ。近年の候補作は、インディーズの映画会社が作った地味めの秀作ドラマが多く、一般観客が知っているヒット作が外れ、関心度が低くなっていた。

 今年の視聴者数は4130万人と前年から500万人も増えた。ビグロー監督と『アバター』のジェームズ・キャメロン監督は元夫婦。マスコミが「元夫婦対決」と大きく取り上げたことで、観客の関心度が高まったようだ。

 しかし、協会側の思惑とは逆に、アカデミー会員は今年もインディーズ映画を支持した。『ハート・ロッカー』は、「史上初の女性監督賞」ばかりでなく、「作品賞で史上最低の興行収入」記録も塗り替えた。興収は1470万ドル。これまで最低だった『ラストエンペラー』(87年)の4400万ドルを大幅に更新した。

 なぜ会員が『ハート・ロッカー』やビグロー監督を支持したのか。授賞式に答えがあった。

 『ハート・ロッカー』で主演男優賞候補になったジェレミー・レナーを紹介する際、俳優のコリン・ファレルは「政治的な映画ではない。だからこそ、1人の男の姿が強烈に迫ってくる」。監督賞候補のビグローを紹介する際、『ハート・ロッカー』の脚本家マーク・ボールは「インディーズ映画の精神を体現する人だ」。

 戦争反対を声高に叫ぶのではなく、爆弾処理班の男たちを描く人間ドラマとして優れていたこと、大手映画会社が作りづらい題材をインディーズ精神で作ったこと。そこに映画業界で働く仲間たちは称賛を送っているのだ。

第82回アカデミー賞の主要部門の受賞
作品賞 『ハート・ロッカー』
監督賞 キャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)
主演男優賞 ジェフ・ブリッジス(『クレイジー・ハート』)
主演女優賞 サンドラ・ブロック(『しあわせの隠れ場所』)
助演男優賞 クリストフ・ヴァルツ(『イングロリアス・バスターズ』)
助演女優賞 モニーク(『プレシャス』)
オリジナル脚本賞 『ハート・ロッカー』
脚色賞 『プレシャス』
長編アニメ映画賞 『カールじいさんの空飛ぶ家』
歌曲賞 『クレイジー・ハート』
作曲賞 『カールじいさんの空飛ぶ家』