株式会社化で保険契約者が失ったものは、経営参加の権利

 第一生命の配当付きの保険契約者は、株式会社化で株式や現金を得た一方で、失ったものもある。それは相互会社の「社員としての権利」だ。

 その一つが経営に参加する権利だ。相互会社では会社の重要事項を「社員総会」で決めるが、数百万人もの社員を擁する保険会社で社員総会を開くのは困難だ。そこで社員の中から「総代」と呼ぶ代表者を選び、その集会である「総代会」において重要事項を決議する体制をとっている。

相互会社から株式会社への移行で、保険契約者は「社員としての権利」を失った。その代わりに株主が、株主総会で経営に参加する権利と、株主配当を受ける権利を持つ

 相互会社時代の第一生命でも、個々の社員は総代を選出する一票の投票権を持ち、間接的に経営に参加できた。しかし株式会社化で総代会はなくなり、その権利も消えた。

 会社が持つ財産の分配を求める権利も失われた。具体的には先述した社員配当や、解散時に残余財産を受け取る権利などだ。ただ社員配当については、第一生命が「契約者配当」という名目で従来と同じ水準で行うことを表明しており、当面は保険契約者の利益が損なわれることはなさそうだ。

 これらの権利を得るのが、第一生命の株式を持つ株主だ。社員総会・総代会の機能は「株主総会」が担い、会社の利益は「株主配当」として受ける権利を持つ。

 株式会社化で「社員としての権利」を失った第一生命の保険契約者は、「一企業の顧客」に過ぎないものになった。保険契約者に割り当てられた株式は、その損失に対する補償という意味を持つ。株式も金銭ももらえない保険契約者は、何の補償もないまま「社員としての権利」を奪われた格好だが、すべては総代会を介して「社員みんなで決めたこと」によるものだ。