ショートネタブームも一段落したと言われるお笑い界において、このところ勢いを加速させている番組がある。土曜深夜に放送中の『潜在異色(せんざいいしき)』(日テレ系)だ。
出演するのは、南海キャンディーズの山里やアンガールズの田中、鳥居みゆきら。山里とオードリー・若林による漫才や、自分たちのツッコミを客観的に分析して笑いをとるなど、ほかのバラエティ番組では見ることのできないネタが評判となり、深夜24時50分という遅い時間帯にもかかわらず2月13日放送では視聴率5.0%。数字は右肩上がりだ。
同番組は、08年4月から同じ名称で開催されてきたお笑いライブを番組化したもの。もともとは、企画演出の安島(あじま)隆氏が、“テレビ的にはボツネタ”といわれるものを集めてライブを始めた。
あじま・たかし 日本テレビバラエティー局所属。過去に『ぜんぶウソ』などを担当。1月の特番『キレてもいいですか?』が、4月『コレってアリですか?』としてレギュラー化
「当初は番組にする予定はありませんでした。山里さんから『政治漫談をやりたい』という話や、田中さんからは『落語をやりたい』など、2人から色々と聞いていたのですが、今のバラエティに山里さんの政治漫談のニーズがあるか、というとたぶん無いですよね(笑)。それなら芸人さんが心の奥底でためている粗削りな思いを、そのまま吐き出せる場所を作ればいいんじゃないかと、実は会社にも黙ってライブを始めました」
第1回公演には、山里と田中にロンドンブーツ1号2号の田村亮、ドランクドラゴンの鈴木を加えた4名が参加。80人規模の劇場がようやく埋まる程度だったが、後に、メンバーが増え、3回目からは日テレのイベント部に安島氏自らが売り込み、同局の“公認”イベントに。クチコミで広がり、今では900人規模の公演がすぐに完売する人気ライブへと成長。お笑い界の新風となりつつある。
単独ライブをやるクラスの芸人たちだけに、やりたいことはそこで消化できそうな気もするが、実際はそうもいかないところが盲点だった。「彼らはプロなので、お客さんが期待しているイメージにきちんと応える。(芸人の名を冠するライブでは)本人もその枠組みを大切にするがゆえ、それを逸脱したものはやりづらいというのもある」。芸人たちがこれまでは胸の奥にしまっていた“なにか新しいことをやりたい”という思いを受け止める場として同ライブは機能している。
例えば、ドランクドラゴンの鈴木はこれまで自分でネタを書いた経験が無いことが密かにコンプレックスになっていたという。彼は第1回公演で初めて自らネタを書き一人コントに挑戦。公演終了後、鈴木が洩らした「やっと自分をお笑い芸人と呼んでもいいと思えた」という一言にこの公演の意味が集約されている。
ほかにも、安島氏が「ストーリーテリング能力に優れている」という田中が書いた長尺のコント、「台本の描写が小説的でビックリした」というオードリー・春日の一人コントなど「完成品じゃなくても出してしまう」というスタンスのもと、次々に新しいことにチャレンジ。「本当に楽しくてやっているという演者の熱がお客さんに伝わっているのが分かる。僕は演出をほとんどしていないんです。相談されれば提案はしますが、芸人さんが面白いと思うことに僕も乗っかるし、それに対して余計なことはしない」。











