2011年7月のアナログ停波を控え、不況下でも薄型テレビ市場は依然として活況を呈している。その中でも現在、特に注目されているのが「録画機能付きテレビ」だ。日立製作所が03年に先べんを付けた“録画テレビ”だが、04年には東芝、08年にはパナソニックとシャープ、09年には三菱電機が製品を投入。今や録画機能付きテレビの市場シェアは15%を超え、20%に達しようとする勢いとなっている。
ではなぜ今、録画テレビが注目されているのか。その魅力はどこにあるのか。デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に聞いた。
日立、東芝が先べんをつけた“録画テレビ”
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏
録画テレビの歴史は1995年前後に松下電器産業(現・パナソニック)が提案した、ICに録画できるテレビから始まったと記憶しています。生で視聴している限り、放送は次々に消えてしまいます。それを一時的に記録する機能をテレビに内蔵して、例えば10秒前に戻れるようにするというものです。商品化されたかどうかは定かではありませんが、そういうものが発想としてありました。
VHSデッキの時代にも録画できるテレビ、いわゆる「テレビデオ」はありました。しかし従来のテレビデオは頭出しに時間がかかる「リニアメディア」だから、タイムシフト視聴というよりはレンタルビデオなどを見るのがメインでした。サクサクとタイムシフト視聴するためには、手軽に頭出しができる「ノンリニアメディア」でなければならないのです。
日立製作所が2003年12月に発売した「Woooシリーズ」向けHDD内蔵チューナーボックス「AVC-HR5000」(写真右)。セパレートタイプで、HDD非内蔵のチューナーボックスも選べた
本格的に録画テレビを市場投入したのは日立製作所の「Woooシリーズ」が最初(2003年12月発売のWooo向けHDD内蔵チューナーボックス「AVC-HR5000」)でした。しかしこれは、まだテレビデオの延長線上にあるものでした。日立はDVDレコーダーで他社に出遅れたことから、DVDレコーダーで戦うよりはテレビにHDDを入れた方が差別化につながるし、レコーダー代わりにもなると考えたのです。レコーダーを内蔵することでリモコンが一つで済むし、配線もいらなくなるといったメリットを狙っていました。もちろんハードディスクですから、テレビデオとは比較にならないほど、操作性はよくなりました。
東芝が2004年4月に発売した、LAN HDDへの録画が可能な「液晶beautiful “face” LZ150シリーズ」
次に市場投入されたのが東芝の現「REGZAシリーズ」の前身である「液晶beautiful “face”シリーズ」ですね。日立のWoooシリーズは自分でEPG(電子番組表)を利用して録画するものでしたので、使い方はDVDレコーダーと共通していました。東芝が画期的だったのは、テレビの使い方そのものを革新するというか、テレビが人々に与えるベネフィットをもっと高めていこうという発想があったことです。
それは、ニュースや天気予報など決まった番組の最新放送を視聴できる「今すぐニュース」や、来客時などに視聴していた番組を一時停止して、後で続きを見られる「ちょっとタイム」などです。もちろんそれは録画テレビならできます。でも単に最新ニュースを見たいという目的でも、いちいち予約をインプットしなければ見られませんでした。でも「今すぐニュース」機能なら、10時半に帰宅すれば9時のニュース、11時半なら10時のニュースと常に最新のニュースを見られます。テレビ本来の「情報を伝える」という機能そのものをさらに高めました。従来はできなかったテレビ視聴のスタイルを新しく提案したというのが、東芝がもたらした第2期の録画テレビの流れですね。
シャープが2008年11月に発売したBDドライブ内蔵の録画テレビ「AQUOS DXシリーズ」
従来のVHSテレビデオからの延長として考えると、記録できるパッケージメディアがあるといい。その流れを受け継いでいるのが、BDドライブを搭載したシャープの「AQUOS DXシリーズ」です。BDやDVDなどのパッケージメディアに保存したいのであれば、HDDに記録する必要はないわけです。BDやDVDに直接録画してしまえばいい。
HDDを搭載するメリットは、頭出しが自在にできるノンリニア性にあります。東芝REGZAシリーズの「今すぐニュース」のように生活の中で便利にテレビを使っていくという発想は、絶対にVHSではできません。BDなどのディスクメディアなら可能ですが、容量の限りがあるので難しい。そこはやはりHDDの方が有利ですね。









