今回の「CEATEC JAPAN 2009」で最も注目されたのは、なんといっても「3Dテレビ」だ。パナソニック、ソニー、シャープなどの各社は、競うように3D対応の薄型テレビを参考出展。今回の特徴は、製品化が全く未定のままの技術展示や、家庭用途ではない超大画面を使ったデモではなく、製品に近い50〜60V型のテレビでプレゼンテーションが行われたことだ。3D対応テレビの製品化が間近に迫っていることを実感できた。
人は左右の目で異なる角度から物を見て、その視差で立体感を感じる。この仕組みを利用して、右目と左目用の映像を切り替えてテレビに表示。映像にシンクロして左右のメガネを開閉できる「液晶アクティブシャッター」付きメガネで左右の映像を交互に見せることで、立体感を感じさせる。液晶シャッターは赤外線などでプレーヤーとシンクロ制御される。偏光フィルター付きのメガネを用いる方式もあるが、CEATEC2009の各社のブースでデモされていたのは液晶アクティブシャッター付きメガネによるものだった(上の写真はパナソニック「FULL HD 3D プラズマ シアターシステム」の仕組み)
参考展示されたパナソニックの3D対応BDプレーヤー。BDA(ブルーレイディスク・アソシエーション)によって今年中に3D対応BDの規格が策定される予定だ。BDには右目と左目用の2ストリーム(1080P毎秒60フレーム×2)のフルHD映像が記録され、両者を交互に毎秒120フレームで表示する。データ量は前のフレームとの差分を記録することによって2D映像の約1.5倍で済むため、BDに映画など長時間の3Dコンテンツを記録できる。プレーヤーは3D対応テレビとHDMIで接続される。3D映像を伝送する「HDMI1.4」の規格も今年中に策定される予定だ
各社ともフルHDで解像感の高い3D映像を実現
製品に近い50V型前後のテレビで、3D映像はどのように見えるのだろうか?
まず全般的な印象を書いておこう。どのメーカーのデモでもフルHDの情報量の多さが印象的だった。前方に飛び出すように走り去るレーシングカーや、路面の流れるような奥行き感などが、まるで手で触れられるように眼前に迫ってくる。1980年代にも3D対応のVHDディスクが製品化されたが、解像度が低くてフリッカー(画面のちらつき)が多いなど問題が多かった。結局“キワモノ”の域を出ず、普及することはなかった。今回の3D映像には、そうした従来の3D映像とは一線を画した本格的な立体感が感じられる。基本的な仕組みは以前と同じなのだが、やはりフルHD&フルフレームのリアリティーが大きなブレークスルーになっている。
3D映像はともすると、芝居の“書き割り”(板で作った背景)が重なっているように見えてしまう場合もあるが、これも撮影手法やフルHDの描写力で大きく改善されている。レーシングカーの質感や、背景の木立などの描写がリアルなので、平面を重ねたようには見えない。
50V型前後の家庭サイズだと、100V型を超える超大画面と違って3Dの人物は等身大には映らない。人物が人形のように、車がおもちゃのように見えてしまういわゆる「箱庭現象」が心配だったが、これも50V型前後ならさほど気にならないだろう。ただし、32V型以下ではちょっと違和感があるかもしれない。32V型以下は主に3Dゲーム用途になるだろう。
なお、テレビの正面で見たほうが3D感は強いが、正面から20度程度斜めから見ても大きな違和感はなかった。ただし回転方向にはやや弱いようで、首をかしげると画面が暗くなる場合もあった。
良いことずくめの3D対応テレビだが課題もある。画面からはみ出さない奥行きの3D描写では問題がないが、50V型前後だと映像のクリッピング(端)が視線に入るために、レーシングカーが画面の端からはみ出すと立体感がいきなり消えてしまう。このように、視野一杯の超大画面と違って、画面端の3D描写には違和感が感じられた。
液晶メガネをかけて見るために、画面がやや暗めに感じられる場合もあった。3D映像はプラズマでは2倍速、液晶では4倍速の高速描画が必要で、応答速度を上げるために輝度を低めに抑えている機種もあるのではないだろうか。
動きの速い被写体ではブレが散見され、フリッカーが感じられる映像もあった。
3D映像のフルHD&フルフレーム化で画質はなめらかに進化しているが、それでもまだ「目に優しい」とは言えないだろう。液晶メガネをかけて3D映画を2時間以上鑑賞すると、目が疲れてしまうことがある。
これは表示装置だけでなく、3D映像のコンテンツ(オーサリング)の課題でもある。立体感を強調し過ぎる今までの「びっくりアトラクション」的な映像クリップから、自然な立体感で長時間見ても疲れない映画的な3D映像に脱皮する必要があると思う。
これらの基礎知識を前提に、各社の3Dデモを見てみよう。











