“チキンレース”の敗者はどこに行ったのか?

 東京都心にある某ビアバーでは、開店以来、夜ごとに“チキンレース”が繰り広げられている。この店はベルギービールの銘柄を数多く揃える名店で、ムール貝などの肴も本格的。週に何回も通う常連客も多い。その常連客が、ある日、忽然と姿を消す。残った客は「あいつもか」とヒソヒソ噂しあうという。

 “チキンレース”の敗者は、どこに行ったのだろうか? 答えは簡単。痛風の発作に見舞われたのだ。ベルギービールにたどり着くぐらいだから、常連客はみな、名うてのビール好き。それが某ビアバーを発見し、ベルギービールに魅せられて通ううちに、尿酸値が急上昇。ついに痛風に倒れるというワケだ。そのリスクを十分に承知しつつ、ビールを飲み続けるのが“チキンレース”なのである。

 痛風発作の経験のある友人にこの話をしたら、呵々大笑した後、「でもね、ビールばかりを悪者にしちゃいけないんだよ。僕が痛風になって、医者から一番きつく止められたのは、モツ焼、モツ煮だからね」と、真顔で教えてくれた。

■プリン体の多い食品と少ない食品(100gあたり)
極めて多い
(300mg~)
鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し、カツオブシ、ニボシ、干し椎茸
多い
(200~300mg)
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物
少ない
(50~100mg)
ウナギ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛肩バラ、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ツミレ、ほうれんそう、カリフラワー
極めて少ない
(~50mg)
コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、さつま揚げ、カズノコ、スジコ、ウインナソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶ
(出展:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第1版より<一部改変>)

 なるほど、調べて見ると、痛風の元凶とされるプリン体は、ビールの専売特許ではない。一般的なビールの場合、100グラム当たりのプリン体含有量は7mg以下だ。これに対して、鶏レバーやあん肝酒蒸しは、100グラム当たり300mg以上もプリン体を含む。そのほか、エビ類、魚の干物なども200mg以上とけっこう危ない。居酒屋に行って、ビールを控えめにしたとしても、酒の肴をガンガン食べていたら元も子もないのだ。かの友人は「おいしいものほどプリン体、多いんだよね」と憂い顔で深く、ため息をつく。彼のように、一度、痛風を発症してしまうと、食事制限と縁が切れなくなるケースが多いのだ。

 そろそろ食欲の秋。しかし、調子に乗って「おいしいもの」ばかり食べていると、突然の痛風発症ということにもなりかねないのだ。そんな事態を避けるためには、日頃から予防を心がけるのが一番だろう。