2009年6月14日、「渋滞学」の権威、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授が、茨城県ひたちなか市にある自動車安全運転センターの安全運転中央研修所で渋滞吸収運転の実験を行うというので、実験の現場にお邪魔させていただいた。そして後日、驚きの実験結果を得ることができた!西成先生から「研究論文を書くまでは公開NG」とのお達しを受けていたが、この度、OKが出たので、前回のゴールデンウィークに続き、めでたく、シルバーウィークに合わせての公開とさせていただいた。ということで、グラフと映像にご注目あれ!

(取材・聞き手/山田 久美、酒井 康治=日経トレンディネット 文/山田 久美)

■プロフィール
西成活裕(Katsuhiro Nishinari)
1967年生まれ 東京大学教授

 1995年に東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程終了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て2005年より東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、2009年より東京大学先端科学技術研究センター教授。
 専門は数理物理学、および渋滞学。著書「渋滞学」(新潮選書)が講談社科学出版賞など受賞し、ベストセラーになる。また日本テレビ「世界一受けたい授業!」に出演するなど、多くのテレビ、ラジオ、新聞などのメディアで活躍している。趣味としてオペラアリアを歌い、小椋佳作詞作曲のCDで歌手デビューもした。

 GW直前、「渋滞学」の権威、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授に“究極”の渋滞回避術を伺った。西成教授の著書「渋滞学」や前回の記事「『渋滞学』の権威、西成活裕東大教授が伝授!目からウロコの“究極”の渋滞回避術」を読まれ、西成教授が提唱されている「渋滞吸収運転」を実践されている読者も少なくないのではないだろうか。

 渋滞の列に巻き込まれる前に、手前からぐっとスピードを落として走る「渋滞吸収運転」のメリットは、渋滞に巻き込まれる可能性を低減できることと、渋滞の解消に貢献できること。うまくいけば目的地までブレーキを踏むことなくノンストップで行くことができるため、燃費の向上と到着時間の短縮、すなわちコストと時間の2つの恩恵を受けることができる。

 「渋滞吸収運転を行うドライバーが渋滞を吸収してくれることで、後続の車になればなるほどコストと時間の両面で高い恩恵を受けることができるということは分かっていました。しかしながら、実は正直なところ、渋滞吸収運転を行ったドライバー本人が、時間の面でどれくらいのメリットがあるのかについてはあまりよく分かっていませんでした。速度を落とす分、到着時間はあまり変わらないのではないかという議論です。

 そうなると、お金持ちの皆さんにとっては『いくら燃費が良くても、到着時間が変わらないのであれば、渋滞吸収運転なんてやっても意味がない。Time is money.』ということになります。『なら、コストと時間の両面で、実際にどれくらいのメリットがあるのか、実験で確かめてみよう!』ということになったのです」と西成教授。

 そして、2009年6月14日、茨城県ひたちなか市にある自動車安全運転センターの安全運転中央研修所で渋滞吸収運転の実験が実施された。

渋滞吸収運転の実験が実施された茨城県ひたちなか市にある自動車安全運転センターの安全運転中央研修所(画像クリックで拡大)

「渋滞吸収運転にコストと時間の両面でどれくらいのメリットがあるのか、実験で確認するのだ」と西成教授(画像クリックで拡大)