※この記事は日経BP社発行の『マイケル・ジャクソン メモリアル』からの転載です。

 1982年にリリースされた『スリラー』はマイケルの代表作であり、1億500万枚以上を売り上げた大ヒット作だ。と同時に、彼の音楽性、ひいてはポップミュージックを飛躍的に進化させたアルバムでもあった。

(文/大鷹俊一)

 多くのスキャンダルにまみれた晩年のマイケルや遺産相続といった話ばかりが注目され、彼が果たした音楽的な役割や成果という点への興味や評価が薄れてしまうのはとても悲しいことだ。あまりにも巨大なポップアイコンであったがために、一番重要であるはずの音楽的な部分がかすんでしまうなんていうことは、あってはならないだろう。

『オフ・ザ・ウォール』で開花

『スリラー』のジャケット(画像クリックで拡大)

 マイケルの代表作といえば『スリラー』というのは衆目が一致するところ。名プロデューサー、クインシー・ジョーンズと作り上げたその傑作は未曾有のセールスを記録した。個人的にはその前の79年に出した『オフ・ザ・ウォール』が画期的だったと思う。レイ・チャールズや多くのジャズミュージシャンらと共演してきたクインシーは、その膨大な音楽的キャリアとミュージシャンネットワークでもってマイケルのやろうとする音楽をバックアップした。

 それは70年代のファンクサウンドや当時流行していたディスコをさらに音楽的に深化させたものだった。つまり踊りやすいサウンドと親しみやすいメロディで包んだブラックコンテンポラリー(ブラコン)の誕生を意味した。マイケルが体内に持っていたブラックミュージックやポップスの伝統とブラコンが自然に融合することで、マイケルはスーパースターへの道を駆け上がっていく。

 さらに『オフ・ザ・ウォール』でも共演したビートルズのポール・マッカートニーとのコラボレーションを強め「セイ・セイ・セイ」をシングル発売するなど多面的な要素を吸収し、クインシーとスタジオに籠もるようにして作り上げたのが『スリラー』であった。

黒人音楽にポップスを融合

 自身の姿を反映したものとも言える「ビリー・ジーン」やヴァン・ヘイレンのギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンを起用してロック色を加えた「今夜はビート・イット」、そして空前のヒットとなったプロモーションビデオで有名な「スリラー」といった今でも彼の代表作とされるナンバーが詰まったこのアルバムによってマイケル人気は絶頂に達した。

 黒人音楽が作り上げてきたソウル、ファンク、ディスコといった要素をふまえつつ、時代にふさわしいより踊りやすいサウンドや明確なメロディー、さらにロックや白人ポップスの要素を加えることによって高度なミックストミュージックを作り上げたのだった。それは幼い頃から黒人音楽の伝統とショービジネスの世界を平行して体験してきたマイケルだからこそ実現できた世界でもあった。

『スリラー』発表当時のマイケル(画像クリックで拡大)

<新刊のお知らせ>
大人のロック!特別編集『マイケル・ジャクソン メモリアル』

『マイケル・ジャクソン メモリアル』
(『大人のロック!』 特別編集/680円)

 大人のロック!特別編集『マイケル・ジャクソン メモリアル』(日経BP社/680円)が好評発売中です。1980年代の全盛期、音楽とダンスと映像で人々を熱狂させ、国境や人種や言葉を超えたスーパースターとして君臨したマイケル・ジャクソンさん。その早すぎる死を悼むとともに、秘蔵写真150点とともに生涯を振り返り、その偉大な功績を称えます。

 前半は46ページのカラーグラビアで生涯を振り返るビジュアルページ。後半は大人のロック!や日経エンタテインメント!の専門執筆陣が、音楽・ダンス・映像・ファッションなど、あらゆる角度からマイケルさんの功績と後世への影響を詳しく解説します。巻頭にマイケルさんが最も輝いていた時期のライブフォト・ピンナップポスター付き。お買い求めは全国の書店、コンビニで。

詳しくは→http://ent.nikkeibp.co.jp/ent/rock/mj/

購入は→こちらから