大日本印刷と大手出版社がブックオフコーポレーション(以下ブックオフ)に出資するニュースが、業界を驚かせた。しかしながら、この真の目的は見えていない。もちろん、低迷が続く出版業界をより良い方向に導くという大義があってのこと。だが、消費者にとってどのような影響があるのかはほとんど語られていない。そこで、元シンクタンク研究員でコンテンツビジネスに詳しい松谷創一郎氏に、大日本印刷のブックオフ出資の消費者への影響や、今出版界が抱える問題点について寄稿してもらった。

 出版業界に、大変動が起こりそうだ。

 5月、出版関連6社がブックオフ株を取得した。その6社とは、大手出版社の小学館、集英社、講談社の3社と、印刷大手の大日本印刷とその傘下である丸善と図書館流通センターだ。このメンバーは、業界を驚かせた。

 ブックオフと言えば、3月現在で全国に922店舗を展開する日本最大の中古書店チェーンだ。2008年度の書店売上は約406億円にものぼる。トップである紀伊國屋書店の売上が約1200億円なので、その3分の1ほどとなる。しかし、ブックオフの商品が新刊よりも安い中古であることを考えれば、いかに販売点数が多いかが推察できる。

 ブックオフは、これまで出版社にとっては敵として見なされてきた。発売されたばかりの本が安価で中古販売されたり、書店で万引きされた本が持ち込まれる問題も頻発した。出版社や著者にとっては、出版不況の温床だと見なされることも多かった。

 こうしたブックオフに、大手出版社や大日本印刷(以下DNP)グループが出資したのだ。中心になるのはDNPだ。同社の常務取締役、森野鉄治氏は、その目的を「広義の意味での『オン・デマンド』の実現」だと話す。これは、「読者が、欲しいときに、欲しいかたちで、欲しい本が手に入る」ことを意味している。つまり、一つの本というコンテンツに対して、新刊、新古、中古、レンタルと、読者に多様な選択肢を準備することを想定しているのであろう。

 森野常務は「『オン・デマンド』が実現すれば販売の機会ロスも解決できる」とも話す。消費者は、たくさんの本を読みたいと思っても、すべて新刊で手に入れようとは考えていない。「好きな作家だから新刊で手に入れたい」「初めて挑戦する作家なのでレンタルで試したい」「過去の名作なので中古本でガマンしよう」など、さまざまなニーズがある。これらにうまく応えることができれば、本はもっと読まれる。

 機会ロスが解決できれば、出版業界の最大の問題である40%を超える返品率の改善にも有効だろう。確かに、返品率は異常な高さだ。返品率40%とは、100の商品のうち60しか売れないということ。しかもその数値は年々高くなっており、下がる気配はない。

●販売金額と返品率の推移

おおまかなトレンドとして、出版業界の販売金額が減少傾向の中、返品率はじわじわと上がり続けている(画像クリックで拡大)

 また最近、DNPは積極的に出版関連会社に出資している。書店である丸善やジュンク堂、出版社の主婦の友社、図書館系取次の図書館流通センター(TRC)がそうだ。ブックオフへの出資も、こうした一連の動きの延長線上にある。