動画投稿サイトなどで人気の楽曲を集めた初音ミク関連のCDアルバムをメジャーレーベルが相次いで発売。そのチャートアクションが注目されていたが、supercell feat.初音ミクが3月4日に発売した『supercell』(ソニーミュージック)はオリコンチャートで初登場4位を記録。同日発売の中島美嘉『NO MORE RULES.』(5位)を抑えての4位と、大健闘を見せた。これはネット時代の音楽的状況を語る上で、見逃せない出来事の一つだろう。

「場」を創出した象徴としての歌手

supercell feat.初音ミク『supercell』(ソニーミュージック)
楽曲制作者ryo氏を中心とするプロジェクト「supercell」が初音ミクを使って制作した楽曲を集めたアルバム。ベースとなっているのは、2008年夏に自主制作盤でリリースしたCD/DVD。今回は自主制作盤の楽曲を全曲リミックス、リマスター。通常盤は3000円。DVDと画集が付属する初回限定盤は3500円(画像クリックで拡大)

  まず「初音ミク」とは何かのおさらいから始めよう。初音ミクは実在の歌手ではなく、ボーカロイドと呼ばれるWindows上の歌唱ソフトだ。2007年夏に発売されたこのソフトは、ジリ貧だったDTM業界が息を吹き返すほどの大ヒットとなった。

 合成音声の元となる音源に女性声優を起用、人声と聴き違えるほどリアルな発音を実現し、萌え系のキャラクターを与えたことがヒットの理由だ。ヤマハの音声合成エンジン「VOCALOID2」を利用し、音源ソフトメーカーのクリプトン・フューチャー・メディアがキャラクターイメージと共に開発した。

 初音ミクがあれば、ボーカリストを呼ばなくても言葉を持った曲が作れる。そうした手軽さ、面白さから、アマチュアのクリエイターたちが様々な曲を制作。その音源を動画サイトにアップロードし始め、特にニコニコ動画では爆発的な人気を集めた。

 初音ミクのキャラクターは無名のクリエイターとリスナーの媒介役として機能し、作られた曲はゲームやアニメに親しんだ若いリスナーに受け入れられた。初音ミクはソフトメーカー、クリエイター、リスナーの三者によって創られた、象徴的な意味での「歌手」であるとも言える。