ニコンカメラのフォルムは日本を代表するプロダクトデザインといえるだろう。カメラらしいオーソドックスなデザインは世界中の撮影ファンに支持されている、その一方で、最近のニコンはHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)タイプの「メディアポートUP(ユー・ピー)」など、最先端の尖ったデザインにも挑戦している。

 ニコンデザインの系譜の中で、何が変わらず、どこが変わったのか。ニコンらしさとは何か。これから世界に向けてどう変わるのかについて、ニコンのデザイナー陣に聞いた。

ニコンが2008年12月に発売したヘッドホン型映像再生装置「メディアポート UP」(画像クリックで拡大)

被写体に向かうデザイン

ニコン 映像カンパニー デザイン部 ゼネラルマネジャー 嵩山均氏(画像クリックで拡大)

増田: ニコンのカメラ、特に一眼レフのデザインは、「Nikon Fシリーズ」の時代から一貫して質実剛健というか、骨太い機能美が感じられます。まず、ニコンのデザインポリシーの中で“変わらない部分”についてお聞かせください。

嵩山氏: 私は銀塩一眼レフの「Nikon F-801」や「Nikon F90」の時代からカメラデザインを手がけてきました。その中で変わらない部分は「良い物、しっかりした物、使いやすい物を作る」というポリシーで、これは現在に至るまで不変だと思います。よく「ニコンは技術優先だ」と言われます。誤解を恐れずに申し上げれば、私はそれがニコンの良さでもあって、技術指向で良いと考えています。しっかりした技術を基礎にして、それをうまくデザインに表現していくのが当社のやり方です。

1959年6月に発売された「Nikon F」(画像クリックで拡大)

1988年6月に発売された「Nikon F-801」(画像クリックで拡大)

増田: カメラの機能という確固とした骨組みがあって、その上をデザインで肉付けしていく、というイメージですね。とはいえ、一眼レフの変遷を見ていると、時代とともにブラッシュアップされ、リファインされた部分もあるかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

嵩山氏: しっかりした物作りの基本ポリシーは堅持しつつも、「Nikon F6」あたりから、一眼レフのデザインはどうあるべきかを再考し、コンセプトを組み直しました。その結果生まれたのが、被写体に向かって撮る気持ちを表すデザインでした。報道写真などは肝心な時に1枚が撮れないとアウトですから、まず、極限の状況でも信頼性を感じさせて、ホールドと操作しやすい形にする。さらに、撮ることに集中できるデザインを追求したのです。

増田: 具体的に言うと、撮ることに集中できるように、どの部分のデザインを見直したのでしょうか?

嵩山氏: 被写体に向かう形を表すために、ペンタハウスやグリップの上などを三角形のデザインにしました。また、マス(塊)としての形も前方に面取りをして、被写体に向かうようなフォルムに仕上げています。