フジ・ロック・フェスティバル(FRF)が97年に始まって以後、夏の野外ロックフェスティバルは、着実に日本の音楽文化として定着した。今年も50を超える夏フェスが開催されたが、4大フェスと呼ばれる大型フェスの動員数を見てみると、洋楽系フェスと邦楽系フェスで明暗がくっきり分かれる形となった。

今年の4大夏フェスの入場者数
洋楽系フェス 邦楽系フェス
FUJI ROCK
FESTIVAL
'08
SUMMER
SONIC 08
ROCK IN
JAPAN
FES.2008
RISING
SUN ROCK
FESTIVAL
2008 in EZO
入場者数
(昨年比)
10万4000人
(-8000人)
19万人
(-1万人)
15万人
(+3000人)
8万人
(+1万人)
解説 3日とも当日券を発行。 東京2日目のみ完売し、それ以外は当日券があった。 すべてのチケットが、一般発売日当日に完売。 前売りは完売したが、急きょ、2日通し券を初日に限定発売。

 好調だったのは、ロック・イン・ジャパン・フェス2008(RIJ)とライジング・サン・ロック・フェスティバル2008 in EZO(RSR)の邦楽系のフェス。アーティストのブッキング問題で一悶着あった両者だが、結果は両フェスとも、入場者数は昨年比増となった。RIJはチケットが一般発売日に即日完売。RSRは、入場者数が昨年の7万人から8万人へと大幅増加し、両フェスの元気さが目立った。

“邦高洋低”だった夏フェス

北海道の夏に定着した。ライジング・サン・ロック・フェスティバル2008 in EZOは史上最高の8万人を集めた
写真/原田直樹(画像クリックで拡大)

 一方、洋楽系フェスのFRF'08とサマーソニック08は、そろって入場者数が減少した。FRFは2年連続の減少、サマーソニックは、東京会場の入場者数は昨年と同じだったが、大阪会場が減少し、9回目で初めての入場者数減となった。FRFは、直前になって、最終日のメインステージのヘッドライナー(ステージの最終演奏者)が変更になるアクシデントがあったものの、夏フェスが日本に根づいて10年が経過した今、“先駆者”だった洋楽系フェスが曲がり角に来ているのも確かだ。

 理由としては全国で開催される夏フェスの数が乱立といえるほど増え、観客が分散したことが挙げられる。また増えたフェスのほとんどは邦楽が中心で、より親しみやすい邦楽フェスに観客がシフトしていると見られる。

 サマーソニック08は、例年と比較して邦楽アーティストの出演者数が少なかった。これが観客が減少した一因と見る向きもある。しかも、数が減った邦楽アーティストに対する観客の興味は高く、入場規制となるステージが相次いだ。ここでも邦楽人気を裏づけた格好だ。「洋楽主体のフェスという基本は変わらないが、フェスの楽しさをより高めるためや集客の面で、邦楽アーティストの必要性は感じている」とサマーソニックを主催するクリエイティブマンの平山善成氏は話す。

 ただ洋楽フェスの場合、一部の邦楽系フェスのようにヒットチャートの人気者を集めればよいというわけではないのが難しい。アーティストのラインナップは、まずヘッドライナーが決まり、そのカラーに合うようにオファーをしていくというケースが多い。ヘッドライナーが洋楽アーティストであれば、それに見合う邦楽アーティストはおのずと限られてくる。

独自色を守れるかが鍵

 集客ばかりに目を奪われ、フェスのカラーに合わない人気J-POPアーティストを呼んでしまうと一時的に観客は増えるかもしれないが、今度はフェスの固定ファンにそっぽを向かれてしまう。いかに洋楽アーティストと邦楽アーティストをバランスよくラインナップするかが、洋楽フェスの課題だ。「数年前と比較して、洋楽ファンと邦楽ファンとがはっきり分かれてしまっているような気がする。両者に交わりを生んで、洋楽でも邦楽でも良い音楽は良いと感じてもらうことが我々の役割」と平山氏は語る。

 人気者に頼りすぎてはいけないという面は、洋楽アーティストについても同様だという。「いわゆる伝説の大物アーティストを呼べれば話題になるが、そればかりに頼っていてはいつかは観客に飽きられてしまう。次世代のヘッドライナーを育てることが必要」と平山氏は指摘する。

 今年の大トリのコールドプレイは8年前のサマーソニック00出演時には3番目に登場した。今回のラインナップも、実は洋楽に詳しい音楽関係者には評価が高かった。「半年後か1年後には、すごいアーティストが集まっていたねと言われるようなラインナップだったのでは」とある音楽関係者は指摘する。この中に第2、第3のコールドプレイがいるかもしれない。洋楽系フェスは、次の10年に向けて試行錯誤をしている過渡期といえる。

 洋楽系の野外フェスは、そこで交流した洋邦のアーティストが海外で合同ライブやレコーディングを行うなど、日本の音楽文化の国際化に大きく貢献してきた。サマーソニックは、来年でちょうど10年目を迎える。これまでも、音楽ファンをアッと驚かせてきたサマーソニックがアニバーサリーイヤーに、どんなサプライズで巻き返しを図るか注目される。

(文/日経エンタテインメント!編集部)

※この記事は日経エンタテインメント!(10月号)より転載しました。