俳優からタイトル・デザインまでテレビ番組制作にまつわる93カテゴリーの功績を讃えるエミー賞。第1回の授賞式が行われたのは1949年で、テレビ中継が始まったのは1955年からだ。60回となる今回は2007年6月から08年5月の期間に放送された作品が対象。授賞式は米国時間の9月21日の午後5時から、ロサンゼルスのノキア劇場で開催され、全米に中継される。どの作品、俳優が受賞するのか、さまざまな予想が飛び交っているが、何といっても注目はドラマ・シリーズの主演女優賞だ。

 

同賞3度目のノミネーションの吉報にキーラ・セジウィックは「中年を過ぎたら役がもらえないというのは昔話。年輪を重ねると芝居に深みが出るから、20歳の娘では太刀打ちできないってことを視聴者が認めてくれたことが何よりうれしいわ」とベテランらしいコメントをした。セジウィックの指摘通り、主演女優賞の候補に挙っている5人はすべて45歳以上のベテラン女優。

 その顔ぶれは、セジウィック(『クローザー』のブレンダ・ジョンソン役)のほか、昨年エミー賞を手にしたサリー・フィールド(『ブラザーズ&シスターズ』のノラ・ウォーカー役)、グレン・クローズ(『ダメージ』のパティー・ヒューズ役)、ホリー・ハンター(『セービング・グレイス』のグレイス・ハナダーコ役)、06年に同賞を受賞したマリスカ・ハージティ(『ロー&オーダー:性犯罪特捜班』のオリビア・ベンソン役)。すべて日本で放送されている番組なので、演技を評価できるのも興味深い点だが、5人のベテラン女優が演じる役柄が時代を反映した「デキル女」であることがまた面白い。

 程度の差はあれ、どの女優もこれまで男性中心の職業だった世界に深く入り込んだパイオニアを演じている。弁護士、警部、実業家、刑事2人――。セジウィックが演じるLAPD(ロサンゼルス市警)殺人特捜班を率いるジョンソン本部長補佐は、男の世界で権力を手にしたパイオニアだ。女であることを詫びない、媚びない、「デキル女」の鏡といえるキャラクターである。

 『ダメージ』でクローズが演じる敏腕弁護士ヒューズも、法曹界を揺るがす力を持つ「頂点」に達した役所だ。昔から男性が演じてきた役所だが、現代社会を反映して女性が演じた。女性のレンズを通した“権力の頂点”体験記は、新鮮そのもの! しかも、第一線でバリバリ働く「デキル女」に家族や夫、恋人がいると、男性とは違った心の葛藤や自責の念が生まれて益々面白くなる。

 「デキル女」を演じた5人の主演女優賞候補者はドングリの背比べで、接戦が予想される。しかも、エミー賞は人気投票ではない。主演女優賞は、米国テレビ芸術科学アカデミー(Academy of Television Arts & Sciences、以下略してATAS)の俳優グループに所属する俳優が審査して、前年の俳優の功績を讃える賞だ。全会員が投票して選ぶ作品賞と違って、俳優という“同業者”しか投票できない。さらに俳優の立場から何をどう評価するのかは、一般視聴者はもちろん、ほかのグループ(編集や監督)に属するATAS会員にさえ見当がつかない。