携帯電話によるインターネットの利用者数が、PCのインターネット利用者に匹敵する規模に成長したことから、近年着うたやゲームなどのコンテンツだけでなく、一般的な企業が携帯サイトを立ち上げるケースが増えてきている。しかもそうした企業サイトを見てみると、Flashや動画などを活用したリッチな内容のものが非常に多いのだ。なぜ、企業の携帯サイトはリッチなコンテンツを積極的に取り入れているのだろうか?

急増する企業の携帯サイト

 これまで携帯サイトが注目される機会といえば、「着うた」「モバゲータウン」「ケータイ小説」など、学生を中心とした若者向けの「携帯コンテンツ」がほとんどであった。それゆえ、携帯サイトよりPCサイトを多く利用するビジネスマン世代の多くが、「携帯サイトは主に若者が使うもの」という認識を持っていた。

 だが近年、そうした認識を改めるべき統計が多く発表されている。中でも注目すべきは、総務省が発表している「通信利用動向調査」だ。平成19年度の同調査によると、携帯電話やPHSからのインターネット利用者が7287万人と、PCからのインターネット利用者(7813万人)に匹敵する規模にまで成長している。つまり、PCと携帯電話のインターネット利用者数は、対等といってもいい状況なのだ。

 こうした環境の変化を受け、これまで携帯サイトにあまり積極的でなかった一般企業が、続々と携帯電話向け企業サイトを立ち上げているのだ。もしNTTドコモの携帯電話をお持ちなら、ポータルサイト「iメニュー」にある「企業・ブランド」カテゴリを見てみてほしい。トヨタやソニー、パナソニックといった大手企業から、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドに至るまで、多くの企業が専用サイトを設けているのが理解できるだろう。

Flash、動画……企業の携帯サイトは意外とリッチ

 こうした企業サイトのいくつかを見ていると、1つの傾向を見いだすことができる。携帯サイトといえばPCと比べ制約が多く簡素、というイメージが強いが、企業サイトの多くはFlash、動画、着せ替えメニューなどの新しい機能を活用し、リッチな内容を提供しているのだ。

 例えばANAや日本マクドナルド、高級ブランドのグッチなどは、メニューをFlashで用意することで、デザイン性が高く柔軟性の高いインターフェースを実現している。また日本ミシュランタイヤ(スタッドレスタイヤ「X-ICE」の紹介サイト)やホンダのオフィシャルサイトなどでは、CMやオリジナルの動画コンテンツを携帯電話向けにも配信し、ユーザーに対するアピールをより強いものとしている。

日本ミシュランタイヤではスタッドレスタイヤ「X-ICE」の紹介サイトでCMなど動画コンテンツも配信している(画像クリックで拡大)

 なぜ、企業が単にWebサイトを用意するだけでなく、リッチコンテンツを積極的に活用しているのだろうか? 大きな理由として挙げられる要因の1つに、携帯サイト利用者の嗜好の変化が挙げられるだろう。かつて携帯サイトは表現力が低く、その内容も非常に簡素であった。だが現在では通信料定額化と通信速度の高速化、そして携帯電話の機能向上によってWebサイトの表現力も向上しており、ユーザーもリッチなコンテンツに目が慣れてきている。そのため、「携帯サイトだから」といって簡素なWebサイトを用意してしまうと、ユーザーにそっぽを向かれる可能性も高まっているのだ。

 その傾向を示しているのが、IMJモバイルが発表した「モバイルキャンペーンに関する意識調査」である。この調査において、「バナー広告で受けた印象と、モバイルサイトのギャップにがっかりした経験」が「ある」と答えた人は全体の44.8%、さらに「モバイルサイトの出来が悪く、その企業や商品に対してもマイナスの印象を持った経験」が「ある」と答えた人が全体の66.2%に上る結果となっている。これはPCだけでなく、携帯サイトにおいても高い表現力が求められている裏付けといえるのではないだろうか。

 携帯電話事業者のポータルサイトや娯楽系のコンテンツだけでなく、企業サイトがリッチ機能を活用するというのは、従来の携帯サイトにおけるデザインや操作性から来る制約を取り払い、ユーザーにとって見やすく、使いやすいインターフェースや利便性を追求するようになった傾向の現れといえよう。

バナー広告で受けた印象と、モバイルサイトのギャップにがっかりした経験(単一回答) (IMJモバイル調べ)