連続ドラマのDVD-BOXの売れ行きが好調だ。7月2日発売の『SP(エスピー)警視庁警備部警護課第四係DVD BOX』の初回限定生産版は約3万セットが発売と同時にほぼ完売。『ROOKIES』も、1~3話を収録した『表 BOX』が6万セット(推定)を出荷した。視聴率が良かった作品だけではない。平均で9.9%と“負け組”の『鹿男あをによし』も予約で1万セット超えだ。

『SP(エスピー)警視庁警備部警護課第四係 DVD BOX』
フジテレビ/エイベックス・マーケティング/2万3940円
(C)2008フジテレビ(画像クリックで拡大)

DVD表記の見方…放送局/販売元/価格

話題となったテレビドラマDVD-BOX ※順番は五十音順
鹿男あをによし
フジ系
奈良を舞台にした玉木宏初主演の1月期ドラマ。作品性の高さが評価されて、初回予約で1万セット超え。
ちりとてちん
NHK
貫地谷しほり演じる主人公が、女落語家を目指す。平均視聴率はNHK朝ドラでワースト(関東地区)だったが、BOX第1弾が予約で1万7000セットなどDVDはヒット。
花より男子2
TBS系
井上真央主演で、07年1月期放送。最高27.6%(関東)と高視聴率。07年7月の初回出荷で6万2500セットを突破。
有閑倶楽部
日テレ系
赤西仁主演で、07年10月期放送。同じくジャニーズの田口淳之介、横山裕が共演。俳優の人気がセールスアップに。

視聴率の良かった『のだめカンタービレ』『ガリレオ』『花ざかりの君たちへ』なども人気。Amazon「08年上半期ランキング DVD(日本のテレビドラマ)」ベスト10のうち『有閑~』『花ざかり~』『山田太郎ものがたり』『プロポーズ大作戦』など6作品で、ジャニーズが主要メンバー

 単価が2万円前後と高額のため、例えば『SP』の売り上げは6億円以上。地上波でタダで見られたものが、なぜこれだけ売れるのか。

 ひとつはファン向けの「豪華な特典」。放送時間の都合上やむを得ず落ちた映像(通称“やむ落ち”)が入っているのは当たり前。さらに、『SP』のBOXは机の引き出しをイメージ、『有閑倶楽部』はキーホルダーやシールなどオマケが盛りだくさん。デザインやグッズにも工夫が凝らされている。

 2つ目は、「ケータイなどで買いやすくなったこと」。放送の最終話に合わせてDVD発売の情報が解禁されることが多く、「若年層によるケータイ経由の購入が増えています。テレビで告知を見て、その場で予約する方も多いです」(アマゾンジャパン広報部)。

 3つ目に、「映画化による宣伝効果」だ。「劇場版との相乗効果で売れた好例は、『相棒』や『花より男子』です。『相棒』は再放送が繰り返されていたにもかかわらず、男性中心によく売れました。『花男』は発売からしばらくたって落ち着いていたんですが、今回の映画化で、数万セットは動いたのでは?」(TSUTAYA本部セル企画グループ邦画担当マーチャンダイザー勝江正隆氏)。

 さらに「価格の安さ」が後押しすることも。通常1クールの連ドラで2万円前後だが、『ROOKIES 表』は1~3話で1万円を切り、大ヒットにつながった。

利益率が高い連ドラDVD

 売る側も力が入っている。その理由は「利益率の高さ」だ。販売会社の立場だと、まず、テレビドラマは宣伝費がかからない。「視聴率が5%でも500万人が見ている計算。さらに放送局が自主的にスポットを打ってくれる」。一方、映画やシリーズものの海外ドラマは、「大作になると宣伝費で2億~3億円かかってしまうことも」。

第1話の放送後に、販売会社が、最低保証金額を入札。仕入れ本数、作品の人気度合い、支払い方法、返品交渉など、条件にもよるが、通常はセル・レンタルの仕入れ本数に対して、販売価格の50~60%で商品を購入する

 また、連ドラをDVDとして販売する場合、テレビ局側がパッケージまで含めて商品化。販売会社はあくまで全国のショップに流通させる仕入れ販売の形を取ることが多い。交渉次第だが、一般的には販売価格の50%でテレビ局から仕入れ、ショップには販売価格の75%で卸す。つまり、1本あたり25%もの利益が出る。単価が高いので“1万セット売れればヒット”とハードルも低い。「数千円の映画より、BOXを売るほうがおいしい」(販売会社)のだ。

 こうした状況から、販売権取得の競争が激化。近年は販売に大手レコード会社、タレント所属事務所などの参入も相次いでいる。

 テレビ局側にも変化が見られる。傘下に販売会社があれば、人気作のDVDはそこに委託するのが通例だったが、出演者などの関係から、他社に委託するケースも出てきた。条件の良い会社と組もうという動きが強まるかもしれない。

 その影響もあり、購入者へのサービスは、どんどん加速しそうだ。例えばジェネオン エンタテインメントは、8月22日に同時発売の『薔薇のない花屋』『佐々木夫妻の仁義なき戦い』の初回生産分購入者に抽選で香取慎吾、稲垣吾郎が参加する発売記念イベントに招待という豪華な企画を打ち出した。

 とはいえ、売れない作品は1000本にも達しないことも。視聴率だけでは分からない、売れる作品の見極めが、勝負なのだ。

(文/日経エンタテインメント!編集部)

※この記事は日経エンタテインメント!(9月号)より転載しました。