「誰もが意識下深くに持つ内なる海と、波立つ外なる海洋が通じ合う。そのために、空間をデフォルメし、絵柄を大胆にデフォルメして、海を背景ではなく主要な登場人物としてアニメートする」と宮崎駿自身語っているように、今作では海は単なる背景ではなく、主要な登場人物の1人とされている。彼がそこまで「海」にこだわった理由はなんだったのか。それを解くには「母親」もキーワードとなってくる。

 宮崎駿はこれまで何度も“子供の成長”をテーマにしてきたが、それはあくまで“子供が親離れをして成長するためにはどうするべきか”を提示していた。『千と千尋の神隠し』(2001年)や『魔女の宅急便』(1989年)といった作品には、そのテーマがはっきりと見出せる。

 『崖の上のポニョ』も同じような題材ではあるが、過去の作品と違うのは「子供の成長を見守る存在」としての母親の姿だ。特に宗介とポニョのそれぞれの母親は重要なモチーフとして扱われている。

 “成長するためには冒険しなくてはいけない”というのがこれまでの宮崎駿作品であったとするならば、今作は、“冒険するには、いざというときに守ってくれる母親の存在が必要”というような形に問題意識がシフトしている。宗介と母親。ポニョと母親。いずれの関係も愛に満ち、子供を優しく包み込んでいる。後ろで見守る母の存在があってこそ、彼らは危険な冒険に繰り出すことができるとしている。

崖の上にある宗介の家
(C)2008二馬力・GNDHDDT(画像クリックで拡大)

くらげの中に包まれるポニョ
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