(上)小島秀夫監督は「ゲームは最先端技術を吸収して成長し、進化していく総合芸術だと信じています。ゲームの未来を考えたときに、リスクを抱えながらも前へ前へ進んでいくべきだと思います」と語った。(下)『MGS4』は敵から身を隠しながら敵地へ潜入するアクションゲーム
(C)1987 2008 KONAMI Digital Entertainment Co., Ltd.
5月13日、東京・六本木で開催された『メタルギア ソリッド4』(以下、『MGS4』)の完成披露発表会でゲームクリエイター、コナミデジタルエンタテインメントの小島秀夫監督は「『MGS4』はカジュアルゲーム全盛時代という逆風のなか制作しました。日本発のゲームらしいゲームの復興を願った作品です」と語った。
なぜ日本を代表するクリエイターから、日本のゲーム業界の先行きを案ずる発言が飛び出したのか。
85年発売のファミコン用『スーパーマリオブラザーズ』は世界中で4000万本以上を売り上げた。以降、世界中でヒットし続けた日本制作の本格ゲームに陰りが見えているからだ。
ゲーム業界の分析を得意とする、JPモルガン証券のシニアアナリスト前田栄二氏は「00年ごろから日本のゲーム市場は低迷。その間に欧米のゲーム市場は拡大し、欧米を本拠地とするソフトメーカーが、欧米のユーザーの嗜好に合った質の高いタイトルを多数発売。その影響もあり日本でヒットしたタイトルであっても、必ずしも欧米でヒットするわけではなくなってしまった」と理由を語る。
『MGS4』は国内だけでも発売1週間弱で約50万本を売り上げた。久々に世界中でヒットしそうな日本制作の本格ゲームだ。とはいえ、現在、「世界で大ヒット」といえば1000万本クラス。そこに肩を並べるのは難しいかもしれない。鍵を握るのはXbox 360。国内ではまだ100万台に達していないが、今年4月には世界販売台数1900万台を突破した、本格ゲーム向けNo.1プラットフォームだ。世界市場を狙うには欠かせないゲーム機といえる。かたやPS3は1500万台程度と推測される。PS3の機能をフルに生かすため、PS3「専用」とした『MGS4』の1000万本級のヒットは難しいだろう。
日本制作ゲームの強みとは
では、国内制作の本格ゲームをPS3とXbox 360の両機種で開発すれば、すぐに「世界で大ヒット」となるのだろうか?
欧米のゲーム会社は企業買収を繰り返し、次世代ゲーム機向け本格ゲームのばく大な開発費用を企業規模の拡大でカバーしている。日本のメーカーは開発資金の面で太刀打ちできなくなってきている。
また、世界で1000万本級のヒット作を見ると、ギャングや戦争をテーマにしたものが多い。国内と欧米ユーザーの嗜好性の違いや、ゲーム内の暴力表現の規制の問題から、国内ではこうしたジャンルのゲーム開発は難しい。
「05年以降、日本のゲーム市場が拡大の勢いを取り戻しましたが、原動力は『脳トレ』などお手軽ソフトを楽しむライトユーザーでした。そのため、多くのソフトメーカーはいまだに新たな本格ゲームにチャレンジするリスクを取り難いように見えます」(前田氏)
日本制作ゲームの底力を世界に見せつけ、ビジネスとして成功した『MGS4』。しかし、あとに続く日本制作の本格ゲームはなかなか見えてこない。PS3本体発売当初からアナウンスされていた『ファイナルファンタジーXIII』はいまだに具体的な発売日の発表がない。『MGS4』の成功が他メーカーの背中を押すことになるのかが注目される。
過去を振り返ってみると、日本制作のゲームは新しいアイデアを積極的に採用。プレーヤーが次に何をすればよいかが分かりやすい丁寧な作りで、世界中のゲームファンの支持を集めてきた。日本のゲームメーカーは今こそ得意としてきた、斬新なアイデアやきめ細かな作りが求められている。ハード、ソフト両面で世界をリードしていくためにも、本格ゲームに挑戦していく時期にきているといえるだろう。
| 世界中でヒットしている1000万本級クラスのゲーム | ||
| Halo 3 | コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア |
Grand Theft Auto IV |
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| Xbox 360のみで810万本のセールス 欧米、日本で昨年9月に発売。対応機種はXbox 360のみだが、全世界で810万本のセールス(6月時点)。近未来を舞台に「コヴナント」と呼ばれる異星人と、人類の戦いを、欧米ゲームでは主流の一人称視点で描くシューティングゲーム。3部作の完結編となる |
セールスが1000万本突破の戦争アクション 北米は昨年11月、国内は昨年12月に発売。デベロッパーであるInfinity Wardの代表は全機種向け合計でセールス1000万突破を発表した。ソビエト連邦再建を狙う者とテロリストが手を組み米軍と戦うハードなストーリー。対応機種はPS3、Xbox360、PC、ニンテンドーDS |
1100万本出荷セールスは850万本突破 欧米で4月29日に発売。発売元のTake-Two Interactiveは決算発表会で5月31日の時点で1100万本の出荷を明らかにした。架空の街を舞台に裏社会の物語を描いたアクションゲーム。国内ではカプコンより年内発売予定。対応機種はPS3とXbox 360 |
(文/日経エンタテインメント!編集部)
※この記事は日経エンタテインメント!(8月号)より転載しました。














