4月にスタートしたドラマもいよいよゴールが見えてきた。ここまでくると視聴率的に各作品の悲喜こもごもがより明快になるが、そのなかで最も勢いがあって面白いドラマといえば、『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)であることに異論はないだろう。初回こそ13.9%と月並みな視聴率だったものの、15%台を着実に重ね安定した視聴者を獲得。その後、第5話で19.9%に一気に跳ね上がり、以降、常に高い数字をキープ。そしてラスト直前となる6月12日の放送では、ついに視聴率20%を突破した。6月19日に迎える最終回も15分拡大し、視聴率20%超えはほぼ確実視されている。鳴りもの入りでスタートした『ごくせん』(日本テレビ系)や『CHANGE』(フジテレビ系)の視聴率が初回をピークに失速しているなか、どうして『ラスト・フレンズ』だけが数字を伸ばすことができたのか?

 その理由は、若く魅力的なキャストがそろったことに尽きるのではないか。そう言ってしまうと実もフタもないかもしれないが、人気者に出演してもらおうと、キャスティング優先で制作が進行する日本のドラマにおいて、キャリア的にも充実したこれだけの演技派&個性派若手俳優が一堂にそろったのは、まさに幸運だったといえよう。

 ストーリーはヒロインの藍田美知留(長澤まさみ)と、彼女の友人である岸本瑠可(上野樹里)との偶然の再会をきっかけに、2人を見守る水島タケル(瑛太)の想い、美知留が恋人の及川宗佑(錦戸亮)から受けるDV(ドメスティック・バイオレンス)、性同一性障害に苦悩する瑠可の姿などを中心に進んでいく。また、放送終了後には同じく主要キャストである水川あさみによるスピンオフ動画をインターネットで配信。ニッチなファンもしっかりフォローをしている。

 『ラスト・フレンズ』のようないわゆる“複数男女恋愛ドラマ”は、もはやドラマの王道ともいえる設定。これまでに『男女七人夏物語』(1986年)、『愛という名のもとに』(1992年)、『あすなろ白書』(1993年)、『白線流し』(1996年)、『オレンジデイズ』(2004年)など、数多くの名作を生んだ。今年の冬ドラマ(1月スタート)で同じようなシチュエーションの『ハチミツとクローバー』(フジテレビ系)が不調だっただけに、『ラスト・フレンズ』のヒットは久々に明るいニュースとしてスポーツ紙にも取り上げられた。

 また、このジャンルのドラマは、ある程度の関係性を持つ複数の男女を最初に設置し、「恋愛」「友情」「衝突」「悩み」「死」などのトピックスを散りばめることでストーリーを“動かしやすい”というメリットがある。視聴者も毎回発生するイベントに自分や身近な友人たちを照らし合わせて感情移入しやすい。

 だが、それゆえにチープな恋愛や現実離れした事件を安易に盛り込もうものなら、即座に拒否反応を示されてしまう。脚本も重要だが、キャストの演技力も当然求められる。『ラスト・フレンズ』は、DVや性同一性障害など、現代の若者たちが抱える問題を効果的に使うことでストーリーの軸を作り出すことに成功した。番組の公式サイトにはDV被害に悩む視聴者の声がたくさん寄せられ、反響の大きさを物語っている。

 ただ、こうした現象は言い換えればそれだけ視聴者および現代社会が深い悩みを抱えていることの表れでもあり、ドラマが時代を映す鏡であることを『ラスト・フレンズ』は皮肉にも証明している。単純にハッピーエンドとはいかないようだが、彼らにどのうようなラストが待っているのか、最終回に注目したい。

(文/中村裕一)