1998年を境にCDの売り上げが徐々に減りはじめ、今年で10年を迎えるが、音楽業界が再び盛況を迎える兆しはいまだ見えてこない。メジャーレコード会社での大幅な人員削減といったニュースも、国内、海外を問わずたびたび聞かれるようになり、音楽業界が一時の勢いを再び取り戻すのは難しいのではないか、という見方が一般的になりつつある。

SellABandのチャート上位にランクインする日本人ロックバンド「Electric Eel Shock」。5000口まであとわずかに迫っている

 そんな状況を踏まえてか、アーティストとリスナーを直接結ぶ“音楽ファンド”がここ数年、目立ってきている。代表的なものは、オランダの起業家3人が2006年に開設した「SellaBand」だろう。このサービスは、レコード会社との契約がないアーティトが自分の楽曲を自由にアップロードし、ユーザーが気に入ったら1口10ドルでレコーディング資金を捻出(ねんしゅつ)するというもの。投資額が5万ドル(1人1口だとすれば5000人分)集まったアーティストには、SellaBandがスタッフを仲介し、CDを作るレコーディングの準備が整えられる。録音された楽曲は、CDパッケージ化されるとともに、同サイトで有料配信されることになる。アーティストを支援したビリーバーと呼ばれる投資者は、1口につき1枚の限定盤CDを得るほか、SellaBand内での販売楽曲数などに応じて利益が還元される仕組みだ。

 SellaBandからCDデビューした最も有名なアーティストは、ポーランドの女性シンガーソングライター、ジュリア・マルセル(Julia Marcell)だろう。彼女は、2007年の10月に投資額が5万ドルに達し、見事デビューに漕ぎ付けたアーティストの1人。まだ一般層にまでその名前は浸透していないが、SellaBandユーザーの間では既に知名度は高い。

 SellaBandでデビューをつかもうとしているアーティストは、なにも外国人だけではない。サイトに掲載されているウィークリーチャート(6月9日現在)を見てみると、2位に日本のバンド、「Electric Eel Shock」の名前が上がっている。彼らは、世界を跨いで活動する3ピースのロックバンド。これまでに5枚のアルバムをリリースし、サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)などの海外フェスにも数多く出演した経歴を持ち、日本よりも海外での知名度が高いバンドだ。2008年5月にSellaBandに参加して以来、6月9日現在までに集めた投資額は3万6430ドル。あと一歩のところで伸び悩んでいる感はあるが、日本のアーティストで最もSellaBandデビューの可能性がある一組と言える。また女性シンガーソングライター、こなかりゆもSellaBandにアーティスト登録しており、一部で話題を集めている。