「長さん。もうこれで映画はおしまいだね。もうこれ以上の映画はできない。こんな立派な映画、もう2度とできない」

 そういったのは、元宝島編集長で文筆家の植草甚一氏。文中の「長さん」とは映画評論家の淀川長治氏(ともに故人)だ。これは1965年の『8 1/2』(はっか にぶんのいち)の日本初公開時に交わされた会話である。

『8 1/2』
監督・原作・脚本:フェデリコ・フェリーニ/出演:マルチェロ・マストロヤンニほか/制作国:イタリア
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 「これで映画もおしまいだね」と言われてから、もう40年以上が経った。その間、膨大な数の映画が作られてきたが、映画歴代ベスト10のようなランキングには、必ずといっていいほどこの映画はランクインされている。最近でも、北野武がこの作品に影響を受けたことを公言するなど、世界の映画作家たちに与えた影響は計り知れない。

 イタリア映画界を代表し、今日でも世界の映画制作者たちを刺激し続けるこの作品は、これまでVHSビデオでしか市場に出回っておらず、長らくDVD化が待たれてきた。それが、IMAGICA TVより『8 1/2 愛蔵版』としてDVDで発売されることになった。発売は5月31日。

 監督は「映像の魔術師」と呼ばれたフェデリコ・フェリーニ。イタリア初の大規模な映画撮影所のチネチッタ・スタジオを拠点とし、映画史に燦然(さんぜん)と輝く作品を撮り続けた。アカデミー賞外国語映画賞を3回も受賞し、カンヌ映画祭では『甘い生活』(1959年)でパルム・ドールを受賞するなど、名実ともに20世紀を代表する映画監督の一人だ。