小谷浩樹氏、ソニー B2Bソリューション事業本部 Livespireプロジェクト担当部長

 ソニーはミュージカルなどの舞台やスポーツイベントなどを全国の映画館に向けて製作・配給するサービス「Livespire(ライブスパイア)」を開始すると発表した。同社は1989年にハリウッドのコロンビア映画を買収し、世界でビッグ6と呼ばれるソニー・ピクチャーズを所有している。今回はソニー・ピクチャーズではなく、ソニー株式会社本体がライブイベントの映像作品の製作・配給事業に乗り出す。既に第1弾作品としてミュージカルを映像化した『メトロに乗って』が5月10日から公開されている。第2弾として舞台を映像化した『FROGS~フロッグス』の配給も決定。今、なぜ、ソニーがコンテンツ事業に本格的に参入するのか? 同社B2Bソリューション事業本部のLivespireプロジェクト担当部長の小谷浩樹氏に話を聞いた。

ハード&ソフトの両輪で映画のデジタル化を推進

 今回、ソニーがサービスを開始する「Livespire」は、既存の映画の製作・配給サービスとは異なる点が多い。まず。映像のフォーマットが「デジタルシネマ」である点。日本では映画館向けの映像はフィルムで撮影し、いわゆるフィルム映写機で上映するのがまだまだ一般的。その理由の一つとして挙げられるのが、映画館の大きなスクリーンに耐えうる画質を持ったデジタルシネマ向けのビデオカメラやプロジェクターがほとんどなかったという要因がある。

 ところが最近、大スクリーンに対応するデジタルシネマ関連製品、ソニー製品でいえば「“Cine Alta(シネアルタ)”」が開発され、映画のデジタル化が進んでいる。映画のデジタル化に精力的だったジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』や『ハリー・ポッター』シリーズなどはデジタル作品である。そのデジタルシネマの分野にソニーがライブイベントの映像作品を製作・配給するという。カメラやプロジェクターといったハードウエアだけならば話は分かるが、なぜコンテンツ(=ソフト)の製作・配給にソニー本体が乗り出すのか。

「近年、(米国を中心に)デジタルシネマに対応した映画館が増えつつあります。日本ではまだ全スクリーンの3%(102館)しか対応していませんので、日本では今後インフラが整いつつある、といったところです。ソニーとしてはカメラやプロジェクターなど撮影から編集、上映までをカバーするハードウエアが整った。しかし、お客さまが最終的に楽しむのは映画の記録形式ではなくコンテンツです。だからデジタルならではの新たなコンテンツ事業に乗り出すということです。これにより、ハードとソフトの両輪でデジタル化を進めていくことが可能になります」(同氏)。

 つまり、ソニーとしては今後の成長市場であるデジタルシネマの分野で、ライブイベントの映像作品というデジタル映像ソフトと、カメラやプロジェクターといったハードウエアを同時に売り込んだほうが、よりデジタル化のメリットを映画関係者に訴求できると判断したようだ。