海外で評価される日本のエンタテインメントといえば、アニメやゲームが多いが、日本でおなじみのテレビ番組が今、全米を騒がせている。TBSの『SASUKE』だ。

カンヌでテレビ見本市用に制作された『SASUKE』のイメージポスター。アメリカでヒットすると、英語圏をはじめとするその他の国が買い付けに動くことが多い。『Ninja Warrior』もすでに12カ国に販売済みだが、放送を開始した国ではいずれも人気になっているため、今後さらに世界中に広まるのは必至
(C)2007 Steve Cohn Photography(画像クリックで拡大)

 『SASUKE』とは、『筋肉番付』のスペシャル版として97年に開始され、現在も年2回ペースで放送されているスポーツバラエティ。年齢や性別、プロアマ問わず、国内外から募った体力自慢の参加者が、巨大障害コース制覇を目指すという内容で、五輪の金メダリストクラスのトップアスリートでさえも脱落する超難関であることから、「究極のサバイバルアタック」といわれている。これまでの挑戦者はのべ2000人。完全制覇したのは、わずか2名だ。

 TBSは、アメリカのケーブル局である「G4」に同番組を販売。G4は、主にゲームがらみの番組を扱うサブカルチャー系チャンネルで、現地では今、成長率No.1といわれている局である。ここで『SASUKE』は、30分番組に再編集され、タイトルを『Ninja Warrior』(忍者の戦士)に変え、06年10月から深夜枠で開始された。

 番組は、放送開始直後から大反響となり、5カ月後の07年3月には18時台と22時台に昇格。以降、人気はうなぎのぼりで加速。同局開局以来の最高視聴率を記録し、局全体の視聴率アップにも貢献、G4の看板番組になっている。昨年秋からは、日本で収録される『SASUKE』出場権をかけて、アメリカ代表を送り込む全米規模のキャンペーンが敢行されているというフィーバーぶりだ。

有力メディアが絶賛の嵐

今年4月、『USA TODAY』に掲載された記事。「アメリカは日本のテレビ番組にも大きな影響を受けている」というG4社長のコメントが紹介(画像クリックで拡大)

 これだけなら、「しょせんオタク向けケーブル局の中での人気だろう」と受け取ってしまうが、そうでなさそうと感じさせるのは、他メディアの反応だ。発行部数全米1位の『USA TODAY』をはじめ、『ロサンゼルス・タイムズ』などの大手新聞、『スポーツ・イラストレイテッド』『GQ』『ビジネスウイーク』などの有力誌がこぞって番組を絶賛。各誌が選ぶベスト番組にも多く顔を出している。ケーブル局の外国番組がこれだけ評価を受けるのは異例だ。

 現地では、同ジャンルの番組として、地上波ネットワークのNBCが放送している『Gladiators』という対戦型スポーツ番組があるが、名指しでこれより評価する記事も多い。『Ninja Warrior』人気にあやかって、4大ネットワークの1つDisney/ABCが近々『Wipe Out』という番組をスタートさせるなど、その影響は、アメリカのテレビ界全体へ広がっている。

 ここまで加熱した背景には、昨年11月から始まった全米脚本家協会のストライキがある。映画やテレビ番組販売の再利用料をめぐる大騒動は3カ月にもわたり、一時はアカデミー賞の開催まで危ぶまれたのは記憶に新しい。この影響で米テレビ界は、人気ドラマやトーク番組の制作が軒並みストップ、過去の再放送しか流れないという状況が続いた。ちょうどその時期、『Ninja Warrior』は人気が波に乗っていたため、「米テレビ界の混乱」が皮肉にも追い風になった形だ。地方紙であるピッツバーグ・トリビューン・レビューにも「脚本家ストの間に、爆発的ヒットと化したアクション満載の新しいリアリティーショー。日本から輸入した『Ninja Warrior』は、もう『ER』を見なくていいと思えるほど風変わりで面白く、独創的」と記事が掲載されている。

『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』の「面白ビデオコーナー」のアメリカ版は現地スタッフとキャストで制作されるフォーマット番組で、89年以来現在も続く人気長寿番組。写真は現地版のプロデューサー、ヴィン・ディ・ボナ氏
(C)2007 Steve Cohn Photography(画像クリックで拡大)

 アメリカでの人気を受け、現在TBSには、各国からの引き合いが殺到しているという。TBSコンテンツ事業局の杉山真喜人氏は「勝敗がすべてではないという欧米には斬新なサスケの概念が世界に拡散している。励まし合って難コースに挑戦する姿は、文化的にも好影響では」と語る。

 TBSの番組では『風雲!たけし城』が50カ国以上に売れているほか、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』の「面白ビデオコーナー」のアメリカ版は80カ国以上に販売、同番組のプロデューサーが昨年9月、ハリウッド殿堂入りするという快挙も成し遂げている(写真右)。くしくも海外はクールジャパンブーム。日本のテレビは今後ますます世界のお茶の間を沸かせるかもしれない。


(文/日経エンタテインメント!編集部)

※この記事は日経エンタテインメント!(6月号)より転載しました。