彼女たちの核となるサウンドを一手に引き受けているのが、クラブシーンで絶大な人気を誇るcapsuleの中田ヤスタカ(※[注])だ。メジャーデビュー前の2003年から一貫してサウンドプロデュースを行っているが、アイドルユニットとして、これは珍しいケース。通常はヒット曲がないと、スタッフを総入れ替えして局面を打開しようとする。しかしPerfumeは、プロデューサーはもちろん、ジャケットデザインのビジュアル面や振り付け担当までもがデビュー当初から同じスタッフ。どちらかと言えばアーティストに用いられるやり方を通したことで、Perfumeというブランドコンセプトが確実なものとなっていったのだろう。

 アーティストとしてPerfumeが評価されていることは、昨夏、「サマーソニック」に出演を果したことからもわかる。実は、業界関係者や同業者にファンが多いのも彼女たちの特徴で、その代表格が木村カエラだ。流行に敏感な若者に影響力のある彼女が、自身のラジオ番組で大々的にファンを公言したことも、追い風となったと言われている。

 余談だが、実は最近、テクノがジワジワと盛り上がっている。前述の木村カエラは、石野卓球をプロデューサーに迎えた『ジャスパー』を今年2月にリリース。また、その石野が所属する電気グルーヴは4月に約8年ぶりのアルバム『J-POP』を発表した。そんな音楽シーン全体のテクノ再考の波も、Perfumeにとって好材料といえそうだ。

 プロデュース力や周囲のバックアップに加え、3人に自力があることもまた、Perfumeの強みだろう。小学生の頃から、彼女たちの地元にある「アクターズスクール広島」に通い、ダンスや歌のレッスンを受けてきた。まだ19歳ながら、ユニット歴は8年を数え、お互いのことを「戦友」と語るほど結束力も固い。気心が知れた同士だからこそ、広島弁丸出しのぶっちゃけトークもあざとくなく、リアルに聞こえてくる。ときには所属事務所の社長までをネタにする奔放なキャラクターもまた、「面白い」と多くの人に好意的に受け入れられる一因となった。表層的に仲良く、優等生を装おうアイドルユニットが少なくないなか、彼女たちの存在が際立って見えるのは至極当然の事かもしれない。

 サウンドもキャラクターも、今までのアイドルにはない個性的な持ち味で注目を集めるPerfume。最新アルバム『ゲーム』では、よりテクノ色を鮮明に打ち出しており、さらに耳の肥えた音楽ファンの支持を集めそうだ。事実、おしゃれだからと飛びついた若い世代だけでなく、30歳代後半以上のいわばYMO世代にも少なからず響いている。それが、ダウンロードではなく、CDセールスという結果に多少影響しているのではないかと筆者は推察する。

 本人たちいわく「バッキバキの本格的なテクノ」ではあるが、今作でPerfumeはテクノアイドルからアーティストへの脱却をはかろうとしているわけではない。1人で思う存分歌ったり、歌詞を書きたいという野心は特にないというのが3人の一致した意見だ。「無機質な音に対して、できるだけ感情を込めないように歌っている」など、それぞれが自分の役割を熟知しているからこそ、Perfumeの世界観はより際立つ。現時点での彼女たちの個性をより明確な形にしたのが、アルバム『ゲーム』なのだ。

 アイドルっぽさもまた大切な要素であることを、彼女たちは十分に理解している。それがクオリティの高い音楽や、意外性あるキャラクターとが相まって、Perfumeは新しいアイドル像を作り上げた。高いレベルでそれらを維持し続ける限り、彼女たちの快進撃はこの先もまだまだ続きそうだ。

(文/橘川有子)

※[編集部注]サウンドプロデューサー/DJである中田ヤスタカは、自身のユニットcapsule(カプセル)をメインに活動しているアーティスト。クラブシーンはもちろん服飾・美容関係者から絶大な支持を受けている。彼は、もともとピチカート・ファイヴの影響を受け、capsuleの初期の活動はまさしく「渋谷系」のおしゃれな音楽。Perfumeのプロデュースでは、彼がテクノの派生スタイルであるフレンチエレクトロの手法をミックスして、いわゆる“アキシブ系”な音に仕上げている。中田ヤスタカは、Perfumeのサウンドプロデュース以外にも、m-floやリア・ディゾンなど多数のアーティストのリミックスを手がける。さらに昨年放送されたドラマ「ライアーゲーム」のサウンドトラックも担当した。

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