自分が乗っているのと同じ車にすれ違ったとき、手を振り合うことがあるだろうか。たいていは、気がついているのに無視をして、まっすぐ前方を見つめたまま通り過ぎるのではないか。ところが、フォルクスワーゲンの旧車のオーナーは違う。前方に仲間を発見すれば、10台先であっても、できるだけ近づいてあいさつをしようとするのだ。馬力がなく、運転はしづらく、登録台数は少なく、公道でめったに遭遇しないからだろうか。3月30日、東京・お台場で「ストリートVWジャンボリー」が開催された。日本全国から古いフォルクスワーゲンが約500台集まり、ただひたすら仲間意識を確かめ合うという不思議なイベントだ。
実は筆者も、そんなマイナーなオーナーの一人だ。所有する1966年製のタイプIIは、バスの愛称で親しまれている。名前を知らなくても、実車を見れば「見たことがある」と思う読者が多いのではないか。タイプIIバスをモデルにしたおもちゃがたくさん作られており、独特の愛嬌ある外観で人気がある。いざ、日常の足にしようとすれば、40年以上前の車だけに、苦労が多い。だが、年寄りが多い病院の待合室のように、だれもが自分の車の不具合をうれしそうに語る。筆者の車も先日、キャブレターが不調となり入院したばかり。「どこの工場でどうやって直したの」と、こんな話に乗ってくるのは仲間だけだ。間違っても自分の配偶者や彼女に、キャブレターについてのうんちくを語ってはいけない。
ところが、イベント会場はうらやましいことにカップルで溢れていた。家の頭金を愛車の改造のためにつぎ込んだというのに、仲良く会場を見て回る夫婦さえいた。私が妻の立場だったらとうに三行半を突きつけている。世の中の若い女性たちが寛容になったのかどうかは分からない。中高年参加者の多くがシングルでエントリーしているのと対照的な光景だった。さらに目立ったのは愛犬との参加。キャンプカー仕様車の割合が1割近くあるせいかもしれない。フジテレビの社屋が背景になければ、カリフォルニアで開催されたファンイベントのようにさえ思えた。











