「“新書”最前線」は、日本で最も新書に詳しいWebサイト「新書マップ」の協力で、注目すべき新書の新刊を紹介するコーナーです。各社合わせて毎月80〜100点ほど出版される今いちばん元気な出版物「新書」のトレンド情報を、月1回のペースでお届けします。

 今回の注目は、世界各国(各民族)の「ジョーク集」が3点も出版されたということ。内訳はロシア人、中国人、ユダヤ人。いずれも国際ビジネスシーンにおいて近年とみに無視できなくなってきた面々だ。ここへきてこの3点が出たということは、ビジネス上で彼らと付き合う機会ができ、その素顔を知りたいと思った読者が、手ごろな本を求めているということなのかもしれない。さっそく読み比べてみよう。

【ロシア人】爆笑はできませんが……

松澤一直『頭でわからないなら尻で理解しろ!:爆笑ロシア・ジョーク集』(ベスト新書/750円)(画像クリックで拡大)

 『頭でわからないなら尻【ケツ】で理解しろ!』は、ロシア人の間でささやかれているジョークを集めた本。サブタイトルに「爆笑ロシア・ジョーク集」と銘打ってあるが、正直、腹を抱えて笑えるほど面白いネタは見当たらない。だが、レーニン、スターリン……ゴルバチョフといった人物にまつわるもの、KGBにまつわるもの、他民族との比較もの、彼らの大好きなウオッカにまつわるものなど、ジャンル別に解説とともに並べてあり、旧ソ連体制のころからのロシア人の暮らしぶりや、思考回路がよく分かるように書かれている。

 例えばロシア人はかなりの卑下慢(=劣等感を自慢すること)で、自分らを卑(いや)しくおとしめつつ、ヒヒヒッと笑う人種なのだな、とか。しかし、分かったからといって笑えるわけではない――読者がロシア人ではない場合、ということだが。

 よく考えてみれば、この種の本は別に笑えなくても「可」なのではなかろうか。ロシア人が日常生活でどのように政治に翻弄(ほんろう)されているか、どのような感受性をもって耐えているのかが具体的に分かれば分かるだけ、「可」は「良」になり、「優」にもなる。その意味でこの本は、「優−(マイナス)」といったところ。マイナスを付けたのは、ロシアの名だたる文化系の異才、トルストイ、カンディンスキー、スタニスラフスキーといった人々についてのジョークネタが見当たらなかったことが残念だったためである。