いまや、ケータイは災害時に欠かせないライフラインとなった。そのため、地震などの大きな災害が起きた場合、いかに早くケータイの通信網を復旧させるかがポイントとなる。先日、陸上自衛隊とNTT東日本、NTTドコモが自衛隊朝霞訓練地(埼玉県朝霞市)で災害共同訓練を行ったので、その様子をリポートしよう。

巨大ヘリ・チヌークが砂を撒き散らしながら登場

 抜けるような青空を巨大な影が横切ったと思ったら、青空を覆うように巨大ヘリ「CH-47J(通称チヌーク)」が舞い降りた。着陸時の砂嵐は強烈で、カメラを持った取材陣が体ごと飛ばされるほど。突風とともに着陸したCH-47Jは、すぐに後部ハッチを開け、自衛隊員とNTT東日本、NTTドコモのスタッフが力を合わせて災害用通信設備を運び出していた。

抜けるような青空をバックに、巨大ヘリ・チヌーク(CH-47J)が舞い降りる。チヌークは、災害輸送のエースともいえる存在で、地震や山火事などの災害でたびたび活躍している。今回の共同訓練では、災害地の通信確保のための設備を空輸した(画像クリックで拡大)

着陸時の突風は強烈で、まるで砂嵐のよう。周囲で取材に当たっていたスタッフの中には、あまりの突風に飛ばされそうになる人も(画像クリックで拡大)

チヌークから災害用通信機器を降ろす自衛隊員。NTT東日本とNTTドコモのスタッフも共同で作業していた(画像クリックで拡大)

災害対策用の通信機器と運ぶ、NTT東日本とNTTドコモの車両。両社とも、ヘリでの機材空輸は自前では行わず、自衛隊に依頼しているのだ(画像クリックで拡大)

 今回行った災害訓練は、首都直下地震を想定したもの。自衛隊が通信機器や電源などを被災地へ運び、電話やケータイをいち早く復旧させるための訓練だ。

 この訓練のきっかけとなったのは、3年前の新潟県中越地震。この地震では、NTTの基幹ケーブルが寸断されたり、NTTドコモの基地局が長時間ストップするなどの被害が出た。救出に当たった陸上自衛隊でも、通信の確保にはかなり苦労したようだ。

 そこで、陸上自衛隊とNTT東日本は、お互いを助ける形で災害に対処した。通信確保に困った自衛隊は、NTT東日本のマイクロ回線や衛星回線を借りた。逆に、災害機器の移動手段の確保に困ったNTT東日本は、自衛隊のヘリを借りたという具合だ。机上の空論ではなく、現実の災害だからこそできた共同行動だといえるだろう。

 これをきっかけに、陸上自衛隊とNTT東日本、そしてNTTドコモの共同訓練が3年前から始まった。3回目になる今年は、昨年の新潟県中越沖地震の反省を踏まえて、大量の回線を使う自治体対策本部への通信確保訓練なども行われている。

重要となる発電機もヘリで空輸し、被災地でのケータイ通信を確保

 今回の訓練では、ケータイの災害対策が重視されていた。巨大ヘリのチヌークとともに、「UH-1J(通称ヒューイ)」が飛来し、NTTドコモの基地局のために発々(発動発電機)などを運んだ。

 災害時に一番問題となるのが、ケータイの基地局の電源確保だ。3年前の中越地震、そして昨年7月の中越沖地震でも、ケータイがストップした大きな理由は基地局の電源だった。もちろん、ケータイの基地局には、非常用のバックアップ電源が用意されている。地震で停電しても、「非常用電源でおおむね6時間程度は稼動できる(NTTドコモ)」そうだ。

11人乗りのヘリ「UH-1J(ヒューイ)」も登場。NTTドコモの基地局向けの発電機や、ケータイ充電用のマルチチャージャーなどを空輸した(画像クリックで拡大)

NTTドコモの移動基地局(左)と、空輸に使うUH-1J(右)。災害地でケータイを稼動させるための共同訓練だ(画像クリックで拡大)

ライトブルーがNTTドコモ、ダークブルーがNTT東日本のスタッフだ。ミリタリーカラーの陸上自衛隊員と一緒に、共同で災害対策機器を運ぶ(画像クリックで拡大)

 しかし、非常用のバッテリーを使い切ってしまうと、当然ながら基地局はダウンしてしまう。昨年7月の中越沖地震を例に取ると、地震直後はケータイが使えたのに、それから半日前後経ってから使えなくなる、という事態が発生した。これは、非常用バッテリーが上がってしまったことによるトラブルだ。

 このように、ケータイの災害対策においては、電源の確保がキーポイントとなる。今回の訓練でも、発電機をヘリで空輸したほか、NTTドコモがケータイの移動基地局を用意することにより、被災地でもケータイが使えるようにしていた。