※この記事は2月29日時点の情報です。
最近、何かとメディアで話題となり、ちょっとしたブームとなっている「落語」。
NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」の人気が寄席に客を呼び、桂米朝氏のDVDの販売を伸ばしたそうだ。また、ミステリ作家が書いた新作落語を集めた本「ハナシをノベル!! 花見の巻」(講談社)が出版されたり、立川志の輔氏が創作した新作落語「歓喜の歌」が映画化されたりなど、落語のメディアミックスも盛んに行われている。
『砂漠のバー止まり木 三遊亭白鳥創作落語集』(講談社、1500円)。収録作品は、「給水塔の怪談」「青春残酷物語」「腹ペコ奇談」「仁侠流山動物園」「天使がバスでおりた寄席」「地下鉄親子」「幸せの黄色い干し芋」「マキシム・ド・のん兵衛」「砂漠のバー止まり木」「死神」
そんななかで発売された「砂漠のバー止まり木」(講談社)は、落語のイメージを大きく覆す作品集だ。著者は、独自の世界観を持った新作落語を得意とする落語家・三遊亭白鳥氏。落語家本人が書いた作品集というのは、近年では白鳥氏の師匠・三遊亭円丈氏と関西落語の雄、桂三枝氏のものくらいしかなく、非常に珍しい。誰もが読んでアハハと思いっきり笑える、日本では珍しい純粋な“文字で笑わせる”本になっている。
うらぶれた動物園で年老いた象の病気を治すためにブタとチャボと牛が奮闘するホノボノ話が、動物版“清水の次郎長”物語へとなだれ込む「仁侠流山動物園」。下町の老夫婦が経営する居酒屋が3つ星レストランのサービスに挑戦する「マキシム・ド・のん兵衛」。失恋の痛手を癒やすためタクラマカン砂漠を放浪する男たち達の前に忽然と現れた、世界中の酒を集めた不思議なバーの物語「砂漠のバー止まり木」。あのジャ○ーズ事務所の社長が寄席経営に乗り出したため、新宿の老舗寄席が大ピンチ。そこにふらりとバスに乗って現れた伝説の芸人の大暴れを描いた「天使がバスでおりた寄席」。3人の貧乏学生が食い逃げしようと企んで入ったキャバクラは、実は怪しげな高級クラブ。そこで上海マフィアの身内と間違えられたことから起こる騒動を描く「青春残酷物語」、などなど。
「これって落語なの?」と、思わず聞いてしまいそうになる不思議な物語のなかに、
「山手線に乗るときに、これがあれば大丈夫だって、マクワウリ持って改札入ろうとして捕まったでねえか」 「だって聞いたんだもん、スイカで通れるって」 (「給水塔の怪談」より)
「なんだと、牛と豚とチャボしかいない動物園に、この天下のパンダ様も仲間に加われだとい。やい、世界自然保護基金のシンボルマークにもなってるこの俺が、そんな肉屋のショーケースみたいな所に並べるかい。この野郎、ふざけやがって」 (「仁侠流山動物園」より)
といったギャグ(落語では「くすぐり」と言う)が満載。不思議なテイストとユーモアやブラックな味わいを含んだ、「奇妙な味」と呼ばれる短編小説のジャンルに近い作品集と言える。











