ある書店のフリーペーパー置き場に、目を引く冊子があった。
「雲のうえ めし大盛にしとって!」
表紙にそう書かれた冊子を手にとってパラパラとめくると、町の食堂とおいしそうな定食が大きな写真と文章でいくつも紹介されている。「クウネル」や「天然生活」といったライフスタイル誌のようなビジュアルで、思わず読みふけってしまった。こんな凝ったフリーペーパーをどこが作っているのかと思い、表紙をよく見てみると「北九州市」と書かれている。なんと、自治体が発行している冊子だったのだ。
「雲のうえ」は北九州市が発行しているPR誌で、06年10月からスタートした。きっかけは、06年3月の新北九州空港開港にあわせ、新しい航空会社「スターフライヤー」の新北九州空港―羽田空港便が就航したこと。機内誌として配布し、搭乗客に北九州市の魅力をアピールするのが狙いだったという。「北九州市はかつては『鉄の町』『100万都市』として栄えたが、いまでは人口が100万人を割り、北部九州と勘違いする人までいる」(北九州市役所 企画政策室 にぎわいづくり企画課 桑本 清氏)。もともと首都圏での認知度の向上を模索していた同市にとって、地元と東京を結ぶ新たな空の道は、千載一遇のチャンスだったわけだ。
「クウネル」メンバーも参加
1号1テーマ、「日常」と「人」に焦点を当てる
気になる制作メンバーは、画家の牧野伊三夫氏、編集者の大谷道子氏、アートディレクターの有山達也氏の3人。実は、大谷氏と有山氏は「クウネル」の制作にも関わっている。人気雑誌を手がけるメンバーが参加しているならば、ビジュアル的なクオリティの高さも納得できる。アートディレクターの有山氏は、「市のほうにはまず、制作側に編集を任せてもらうことを約束してもらった。普段の雑誌作りと同じ感覚で、PR誌を作っているという意識は全くない」という。
ビジュアル表現に加え、「雲のうえ」が“雑誌的”と感じる最大の理由は、全体のうち半分以上を1つのテーマに割いていることだろう。1号目の「酒場」に始まり、「市場」「工場」「島」、そして「食堂」。「総ページ数が48ページと少ないので、1つのテーマを深く掘り下げるしかないと考えた」(有山氏)という。

















